Share
「財布は1つにしろ、夫婦なんだから」親戚の集まりで口を挟んできた相手に、私たちが静かに返した正論

月末に繰り返していた会話
結婚してすぐの頃、家計のことでつまずきました。私は毎月の支出を項目ごとに把握したいほうで、妻は大まかに分かればいいという考えでした。
「今月、食費いくらだった?」
「そんなに使ってないと思うよ」
月末になると、この会話を繰り返していました。食費と日用品が混ざったまま、行き先の分からない金額が毎月1万円ほど残ります。私は表計算のファイルを開いたまま、空欄をにらんでいました。
妻が浪費していたわけではありません。冷蔵庫の中身も残高もきちんと回っていて、困っていたのは私だけでした。
座卓の向かいから口を挟まれた
その夏、親戚が集まる席がありました。旅行の話をしていたはずが、いつのまにか家計の話になっています。
「うちは全部、嫁さんに渡してるよ」
従兄がそう言うと、正面に座っていた伯父がこちらを向きました。
「お前らはどうしとる」
「必要なぶんを、それぞれ出しています」
「財布は1つにしろ、夫婦なんだから」
座卓が静かになりました。伯父は箸を置いて、続けます。
「別々にしとる家は長続きせん。信用しとらん証拠だ」
妻が湯呑みを置いて、口を開きました。
「うちは、合う形を試している最中なんです」
「よその家のやり方は、よその家で合っているんだと思います。うちのぶんは、二人で決めます」
私がそう続けると、伯父は何か言いかけて口を閉じました。湯呑みに手を伸ばし、庭のほうへ目をやったまま、しばらく黙っています。
「……まあ、それもそうか」
隣に座っていた伯母が、小さく笑いました。
「この人、うちの通帳がどこにあるかも知らんのにねえ」
座が笑いに変わって、話題は旅行へ戻りました。伯父はその日、家計の話を二度と持ち出しません。
決めたのは共有する項目だけ
帰りの車で、妻が先に口を開きました。
「私も、全部は見せないって意地になってたかも」
「こっちも、細かすぎた」
週末に紙を広げて、共有するのは家賃と光熱費、それに子どものために積むぶんだけと決めました。レシートは、その買い物のときだけ持って帰る。ほかはお互いの財布のままにする。
決めてしまうと、1万円の行方を追う必要がなくなりました。月末の会話も短くなります。
「共有のぶんは、今月これだけ」
「じゃあ来月は、少し戻せるね」
それで終わりです。伯父の言う一つの財布は、うちにはありません。かわりに、二人で開ける引き出しがひとつできました。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
ほかの小説も読む
CHARACTERS
登場人物から探す
THEME
テーマ・シチュエーションから探す
ENDING
結末から探す
最も人気の短編小説
もっと見る >スカッとする短編小説
もっと見る >モヤモヤ短編小説
もっと見る >ゾッとする短編小説
もっと見る >LINEの短編小説
もっと見る >実体験をもとにした短編小説
もっと見る >恋愛トラブル
もっと見る >ハラスメント
もっと見る >金銭トラブル
もっと見る >浮気・不倫
もっと見る >迷惑
もっと見る >仕事のトラブル
もっと見る >非常識
もっと見る >LINE誤爆
もっと見る >思わず気持ちが晴れた「スカッと」
思い出しても背筋が凍る「ゾッと」
その感情を、物語にしませんか。
GLAMでは、あなたのリアルな体験エピソードを
お待ちしています。

GLAM Lifestyle Editorial
編集部
日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
Feature
特集記事


