Share
「ちょっと、店長を呼んで」食券機の故障。上手く対応したと思っていた僕の勘違いとは

昼どきに止まった食券機
学生のころ、ラーメン店のホールでアルバイトをしていました。
ある日の昼どき、入口にある食券機が突然動かなくなりました。
硬貨を入れてもそのまま返却口へ落ち、紙幣も読み込みません。
店の外には、すでに十人ほどのお客さまが並んでいました。
厨房にいた店長が食券機の電源を入れ直しましたが、画面は暗いままです。
「修理を待っていたら、昼営業が終わるな」
店長はそう言うと、食券機の横に立っている私へ指示しました。
「現金で注文を受けよう。メニューを聞いて、番号を書いた紙を渡して」
私は列の先頭に向かって声を張りました。
「食券機が故障したため、こちらで直接ご注文をお伺いします。順番にご案内しますので、そのままお待ちください」
しかし、店内では換気扇の音や食器の重なる音が響いています。入口の外まで並んでいた人に、声が届いているかまでは確認できませんでした。
注文を聞き、現金を受け取り、紙に内容を書いて厨房へ渡す。慣れない作業に追われ、列はなかなか短くなりませんでした。
「何の説明もなかった」
ようやく混雑が落ち着きはじめたころ、カウンターに座っていた男性が私を呼び止めました。
「ちょっと、店長を呼んで」
男性は不機嫌そうな表情で、入口を指さしました。
「外でずっと待っていたのに、何の説明もなかった。前の人が現金を払っているから、見よう見まねで並んでいたんだ」
私はすぐに頭を下げました。
「申し訳ございません。入口でご案内していたのですが、聞こえなかったでしょうか」
「外まで聞こえるわけないだろ。故障していることすら、近くに来るまで分からなかったよ」
厨房から出てきた店長も、男性の話を聞いて謝りました。
「こちらの案内が行き届いておりませんでした。お待たせして申し訳ありません」
男性はしばらく不満を口にしていましたが、最後には「次からは外にも分かるようにしてくれ」と言い、店を出ていきました。
声を出しただけでは伝わらない
昼営業が終わったあと、店長と一緒に当時の状況を振り返りました。
「最初に案内はしたんだよな」
「はい。ただ、列の後ろまで届いたかは確認していませんでした」
店長は入口の外を見ながら、うなずきました。
「こっちは言ったつもりでも、相手に伝わっていなかったら案内したことにはならないな」
その日のうちに、店長は厚紙へ大きく「食券機故障中・現金で注文を承ります」と書き、入口の扉に貼りました。
それまでは、大きな声で伝えれば十分だと思っていました。
けれど、騒がしい店内や長い行列では、声をかけただけで全員に伝わるとは限りません。
あの日の苦情をきっかけに、相手が実際に理解できたかまで確かめることも、接客の一部なのだと知りました。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、20代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
ほかの小説も読む
CHARACTERS
登場人物から探す
THEME
テーマ・シチュエーションから探す
ENDING
結末から探す
最も人気の短編小説
もっと見る >スカッとする短編小説
もっと見る >モヤモヤ短編小説
もっと見る >ゾッとする短編小説
もっと見る >LINEの短編小説
もっと見る >実体験をもとにした短編小説
もっと見る >恋愛トラブル
もっと見る >ハラスメント
もっと見る >金銭トラブル
もっと見る >浮気・不倫
もっと見る >迷惑
もっと見る >仕事のトラブル
もっと見る >非常識
もっと見る >LINE誤爆
もっと見る >思わず気持ちが晴れた「スカッと」
思い出しても背筋が凍る「ゾッと」
その感情を、物語にしませんか。
GLAMでは、あなたのリアルな体験エピソードを
お待ちしています。

GLAM Lifestyle Editorial
編集部
日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
Feature
特集記事


