Share
「在庫を見せろ、奥にまだあるだろ」閉店後も文句を言う客→時計を見て走り出した理由

「在庫を見せろ、奥にまだあるだろ」閉店後も文句を言う客→時計を見て走り出した理由
閉店10分前のレジ前
駅前の雑貨店で販売スタッフとして働いていたころの話です。
閉店10分前、レジを締める準備をしていたところへ、中年の男性が入ってきました。
探していたのは、棚の一角に並ぶ品でした。ちょうど売り切れたばかりで、次の入荷は週明けです。
「申し訳ございません。こちらはお取り寄せになります」
男性の顔つきが変わりました。
「在庫を見せろ、奥にまだあるだろ」
「バックヤードにも置いておりませんので、ご注文の形でお預かりできます」
「客が来てるのに、売る物がないってどういうことだ」
言いながら、片手でカウンターを二度叩きます。
閉店の音楽が流れ終わり、店内に残るお客様はこの男性だけになりました。
始まった武勇伝
「もう閉店のお時間になりますので」
やんわり伝えたつもりでしたが、聞き入れてはもらえません。というより、話の向きが途中から変わっていきました。
「俺はな、若いころは百人単位の部下を動かしてたんだ」
取り寄せの話は、いつのまにかどこかへ消えていました。
「災害のときもボランティアで現地に入ってな。あれは大変だったぞ」
「そうでしたか」
相づちを打つたび、話は次の章へ進みます。
表彰されたときのこと、後輩に慕われたときのこと。
私は品出しのかごを抱えたまま、カウンターの内側に立っていました。
売り場の照明を落とすきっかけも、結局つかめないままです。
壁の時計を見た瞬間
気づけば、閉店時間から1時間が過ぎていました。
「だからな、今の若い連中は根性が」
そこで男性の言葉が切れました。
時計に目が留まったようです。
「……今、何時だ」
「11時を10分ほど回りました」
顔から血の気が引くのが、はっきり見えました。
ポケットを叩いて定期入れを探し、二度ほど言いかけて、その言葉を飲み込みます。
「終電がなくなる」
それだけ言うと、男性は入口へ走り出しました。開ききらない自動ドアの隙間を、体を斜めにして抜けていきます。
「お取り寄せのご注文は、いつでも承ります」
背中に声をかけましたが、届いたかは分かりません。
改札へ駆けていく足音が、閉じたドアの向こうで小さくなっていきました。
店長が奥から出てきて、壁の時計を見上げます。
「ずっと一人で立ってたのか」
「はい。最後まで、ご注文はいただけませんでした」
レジを締めて外へ出ると、駅のホームの明かりがまだついていました。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
ほかの小説も読む
CHARACTERS
登場人物から探す
THEME
テーマ・シチュエーションから探す
ENDING
結末から探す
最も人気の短編小説
もっと見る >スカッとする短編小説
もっと見る >モヤモヤ短編小説
もっと見る >ゾッとする短編小説
もっと見る >LINEの短編小説
もっと見る >実体験をもとにした短編小説
もっと見る >恋愛トラブル
もっと見る >ハラスメント
もっと見る >金銭トラブル
もっと見る >浮気・不倫
もっと見る >迷惑
もっと見る >仕事のトラブル
もっと見る >非常識
もっと見る >LINE誤爆
もっと見る >思わず気持ちが晴れた「スカッと」
思い出しても背筋が凍る「ゾッと」
その感情を、物語にしませんか。
GLAMでは、あなたのリアルな体験エピソードを
お待ちしています。

GLAM Lifestyle Editorial
編集部
日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
Feature
特集記事


