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「チキン20個、今すぐ揚げてよ」忙しいレジを止めた客。だが、店長が渡した番号札が客を動かした瞬間
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昼どきに止まったレジ
都心のコンビニは、平日の昼どきになると別の店に変わります。
会社員が一斉に流れ込んできて、レジの前には必ず列ができるのです。
その日も私は、弁当を抱えて最後尾に並んでいました。
列が動かないと気づいたのは、二分ほど経ってからでした。
先頭に立った男性客が、ホットスナックのケースを指で叩いていたのです。
「チキン20個、今すぐ揚げてよ」
応対していたのは、まだ若い店員でした。
「申し訳ございません、揚げるのにお時間をいただきます」
「待つよ。それと、ここに入ってる分も全部ちょうだい」
ケースの中の串も、コロッケも、まとめて袋に詰めさせています。
数えて、袋を替えて、また数え直す。そのあいだ、レジは止まったままでした。
後ろに並んでいるのは、昼休みを削って買いに来た人ばかりです。
腕時計を見る人、列を離れて棚へ戻る人。誰も声は出しませんが、空気だけが重くなっていきました。
差し出された番号札
奥の扉が開いて、店長の名札を付けた男性が出てきました。
怒鳴りもしなければ、眉をひそめもしません。
ケースの前に立って、静かに男性客へ告げたのです。
「お揚げに15分ほどかかりますので、番号札をお渡しします。お呼びしますので、それまで店内でお待ちください。先に他のお客様のお会計をさせていただきますね」
差し出されたのは、雑誌の棚の脇に置いてある小さな札でした。
「先に頼んだのは俺だろ」
「はい。ですので、揚がり次第いちばんにお呼びいたします」
男性客は、まだ何か言いかけました。けれど、そこで動きが止まったのです。
視線が、自分の後ろへ向きました。
列に並んだ会社員たちが、誰ひとり口を開かず、まっすぐこちらを見ていたのです。
男性客の手が、ゆっくり下がりました。札を受け取ると、耳のあたりが赤くなっていくのが分かりました。
「……分かったよ」
そのまま雑誌の棚へ歩いていき、こちらへ背を向けて立ちました。
店長がレジに入り、若い店員がもう一台のレジを開けます。
「お待ちのお客様、こちらへどうぞ」
一本で詰まっていた列が、二本の線になって一気に流れ出しました。
私の番が来たのは、それから一分もしないうちです。
会計を通してくれた店員の顔から、こわばりが取れていました。
「お待たせしてしまって、すみませんでした」
店を出るとき、揚げ物の音がまだ続いていました。
札を握った男性客は雑誌の棚を見つめたまま、レジのほうを一度も見ようとしません。
別のコンビニまで歩くつもりでいた私は、結局この店の弁当を持って会社へ戻ったのでした。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、20代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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