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「父さんは料理も手伝ってきたからな。20年だぞ」子供に自慢する夫。だが、子供の一言で黙り込んだ

「父さんは料理も手伝ってきたからな。20年だぞ」子供に自慢する夫。だが、子供の一言で黙り込んだ
外での顔
夫は、外面がいい。
親戚の集まりでも、飲み会の帰りでも、決まって同じ話をした。
「20年、料理も手伝ってきたよ俺は」
結婚して20年以上。聞いた人はみんな「いい旦那さんね」と笑ってくれる。私はその場で、曖昧に笑うしかなかった。
けれど家の中の夫は、食べ終えた皿を流しに運ぶこともほとんどない。乾いた洗濯物は、私が畳むまでソファの上で山になっている。
「手伝う」の中身を、私は一度も見たことがなかった。
そのくせ、親戚の家に行けば「うちは分担してますから」と胸を張る。台所を借りて洗い物をする私の背中を、夫はテレビの前から一度も見に来なかった。
その年の冬、私が高熱で寝込んだ日のことだ。寝室のドアが開いて、夫が顔を出した。心配の言葉が来るものだと思っていた。
「夕飯はどうするの?」
枕から頭が上がらなかった。
「……今日は、自分で何とかしてほしい」
「え、俺が?」
返事の代わりに、ドアが閉まる音がした。不服そうな足音が、廊下を遠ざかっていく。
食卓に落ちたひと言
それから何年か過ぎ、子どもたちが家を出る時期になった。
家族そろって囲む、最後の食卓。夫はまた、いつもの話を始めた。
「父さんは料理も手伝ってきたからな。20年だぞ」
グラスを傾け、上機嫌だった。すると箸を持ったまま、上の子がきょとんとした顔で言った。
「お父さんが家のことしてるイメージ、ないんだけど」
場が、静かになった。下の子も続ける。
「私も、お母さんしか見てない」
夫の手が止まった。グラスが宙で止まり、笑いかけた口がそのまま閉じる。目が泳ぎ、私の顔を見て、それから食卓に落ちた。
「……そんなこと、ないだろ」
声が小さかった。誰も、うなずかなかった。
「じゃあ、なに作ってくれたか言ってみてよ」
上の子の一言に、夫は答えられなかった。20年言い続けてきた話が、20年ぶんの目撃者の前で、たった一言で崩れていく。
私は初めて、口に出した。
「20年、私も待ってたの。手伝ってくれるのを」
夫は何も返せなかった。耳まで赤くして、湯気の立つ皿をじっと見ていた。
次の朝、台所で水音がした。夫が、自分の茶碗を洗っていた。
「……これ、洗剤つけすぎか?」
「うん、半分でいい」
背中が、少しだけ丸まっていた。ゴミ袋を提げて出ていく姿を、私は黙って見送った。
長年の習慣は、そう簡単には変わらない。手つきは今もぎこちないし、忘れる日もある。それでも夫は、外であの話をしなくなった。子どもたちの前で一度崩れた看板は、もう掲げられなかったのだ。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、50代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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