MENU

Share

HOME LIFESTYLE STORY COLUMN

「もう少し減額してもいいのでは」毎年議論だけ繰り返して何も決めない町内会。だが、払っている会費に感じた違和感とは

「もう少し減額してもいいのでは」毎年議論だけ繰り返して何も決めない町内会。だが、払っている会費に感じた違和感とは

加入しないとごみも捨てられない町

地方の小さな町に引っ越して8年が経つ。

引っ越した初日に最初の挨拶として手渡されたのが、町内会の加入届だった。

手書きの古い書式に、判を押す場所だけが赤丸で囲まれていた。

この町では加入が事実上必須で、入らなければ集積所にごみを出すことすらできない。

年配の住民が運用するルールには逆らえず、私も渋々ながら判を押した。

会費は月数千円。

当初は夏祭り、運動会、年末の餅つきと行事も多く、それなりに使い道があった。

ところがコロナをきっかけに催しはほぼ全廃され、回覧板が回ってくるだけの組織になった。

「前年通りで」

毎年の総会で会長は決まってそう繰り返した。

負担が減っても会費は据え置き、行事のない年も同じ金額が引き落とされ続けた。

繰越金だけが膨らんでいく決算書

総会で配られる決算書を見れば、繰越金の欄だけが毎年じわじわと数字を増やしていた。

今年で何百万円に達したかは分からない。地元の集会場の改修にも、防災備蓄の更新にも使われた形跡がない。

「もう少し減額してもいいのでは」

若い世帯の代表が手を挙げた。

会場のあちこちで頷く頭が見えた。だが古参の役員が「来年あらためて検討で」と引き取った瞬間、空気がしぼんだ。

手を挙げた若手も、それ以上食い下がらずに座り直した。

翌年の総会でも同じ提案が出た。答えも同じだった。再来年も、その次も。

誰かが決めれば動く話なのに、誰も決められないまま時間だけが過ぎていく。提案する顔ぶれは少しずつ入れ替わったが、引き取る古参の顔ぶれは変わらない。

前年踏襲が続いた8年目の静けさ

今年の総会も同じ展開だった。

決算書、繰越金、減額提案、検討で持ち越し。机を囲む全員が結末を分かっていて、誰も止めずに進行表通りに会は閉じた。

帰り道、隣を歩く同世代の住民が小さく息を吐いた。判で押したような毎年の流れに、もう誰も期待していない顔だった。

「結局、誰が決めるんでしょうね」と彼が呟いたが、私も答えを持ち合わせていなかった。

減らそうと言えば「来年検討」で流される。

8年間、私たちは何も決めない議論のために集まり続けている。手元に残る決算書を眺めて、これがあと10年続くのかと思うと、答えの出ない問いが胸に沈んでいった。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、50代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

ほかの小説も読む

CHARACTERS

登場人物から探す

THEME

テーマ・シチュエーションから探す

ENDING

結末から探す

最も人気の短編小説

もっと見る >

スカッとする短編小説

もっと見る >

モヤモヤ短編小説

もっと見る >

ゾッとする短編小説

もっと見る >

LINEの短編小説

もっと見る >

実体験をもとにした短編小説

もっと見る >

恋愛トラブル

もっと見る >

ハラスメント

もっと見る >

金銭トラブル

もっと見る >

浮気・不倫

もっと見る >

仕事のトラブル

もっと見る >
ふと心に引っかかった「モヤモヤ」
思わず気持ちが晴れた「スカッと」
思い出しても背筋が凍る「ゾッと」

その感情を、物語にしませんか。
GLAMでは、あなたのリアルな体験エピソードを
お待ちしています。

応募フォームはこちら

PROFILE

GLAM Lifestyle Editorial

編集部

日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。

website
前の記事

「うちの子そっち泊めてほしい」突然お願いしてきたいとこ。だが、子供を見送った後のいとこからのメッセージに絶句

GLAM Lifestyle Editorialのすべての記事を見る

Gallery

SHARE !

この記事をシェアする

Follow us !

GLAM公式SNSをフォローする

Feature

特集記事

Ranking