Share
「玄関のポストに、お土産を入れておいた」職場で出会った男。だが、突然のサプライズに困惑したワケ

送ってもらうくらいの、気軽な間柄だった
職場に出入りしていた業者の男性と話すようになったのは、歳が近いと分かってからだった。
仕事の合間に交わすのは、休日の過ごし方や好きな食べ物など、他愛のない話ばかりだった。
「よかったら、今度どこか行きませんか」
そう誘われ、何度か一緒に出かけるようになった。話しやすい人だったし、帰りが遅くなると車で送ってくれることもあった。
ただ、降ろしてもらうのはいつもマンションのエントランス前だった。
「ここで大丈夫です。ありがとうございます」
それ以上、彼がついてくることはない。私も何階の何号室に住んでいるのかまでは話していなかった。
親しくはなっていたけれど、まだ付き合いは浅い。
そのくらいの距離感が、私にはちょうどよかった。
ところがある日、仕事から帰って自宅の玄関まで来ると、ドアのポストに見慣れない紙袋が入っていた。
中に入っていたのは、旅行先のお土産らしい菓子だった。小さなメモを見て、私は手を止めた。
書かれていたのは、彼の名前だった。
私が教えていない部屋まで来ていた
最初に浮かんだのは、うれしいという気持ちではなかった。
どうして、この部屋が分かったのだろう。
私は部屋番号を教えていない。それなのに、彼はエントランスを越え、私の玄関の前まで来ている。
気になって連絡すると、彼はいつもと変わらない調子で言った。
「玄関のポストに、お土産を入れておいた」
私は言葉に詰まりながら、どうして部屋が分かったのか尋ねた。
「あのマンション、仕事で出入りすることがあるんですよ。そのときに分かって」
詳しいことを聞く気にはなれなかった。ただ、彼にとっては、わざわざ私の部屋まで届けること自体が問題だという感覚はなかったようだった。
「サプライズになるかなと思って」
声には悪びれた様子もない。本当に、喜ばせるつもりだったのだと思う。
だからこそ、私は怖くなった。
私にとっては、マンションの前まで送ってもらうことと、自宅の玄関まで来られることはまったく違う。けれど彼の中では、その境目が私よりずっと曖昧だったのかもしれない。
「こういうふうに部屋まで来られるのは、ちょっと困ります」
私がそう伝えると、彼は少し黙ったあと、「迷惑でしたか」と返した。
「今度からは直接渡しますね」
その言葉を聞いても、気持ちは軽くならなかった。
もらった菓子は、その日のうちは袋を開けられなかった。悪意がなくても、こちらが守っていた距離を知らないうちに越えられることがある。そのことが、妙に心に残った出来事だった。
※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
ほかの小説も読む
CHARACTERS
登場人物から探す
THEME
テーマ・シチュエーションから探す
ENDING
結末から探す
最も人気の短編小説
もっと見る >スカッとする短編小説
もっと見る >モヤモヤ短編小説
もっと見る >ゾッとする短編小説
もっと見る >LINEの短編小説
もっと見る >実体験をもとにした短編小説
もっと見る >恋愛トラブル
もっと見る >ハラスメント
もっと見る >金銭トラブル
もっと見る >浮気・不倫
もっと見る >迷惑
もっと見る >仕事のトラブル
もっと見る >非常識
もっと見る >LINE誤爆
もっと見る >思わず気持ちが晴れた「スカッと」
思い出しても背筋が凍る「ゾッと」
その感情を、物語にしませんか。
GLAMでは、あなたのリアルな体験エピソードを
お待ちしています。

GLAM Lifestyle Editorial
編集部
日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
Feature
特集記事


