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「その話はやめろ、もう降りるぞ」電車で談笑していた男たち。だが、突如話をやめて降りたワケ

その話はやめろもう降りるぞ電車で談笑していた男たちだが突如話をやめて降りたワケ

向かいの席から、聞くつもりのない話が流れてきた

仕事帰りの電車は、その日も程よく混んでいた。

私は運よく空いていた席に腰を下ろし、鞄を膝に抱えて息をついた。

向かいの席には、男性の集団が並んで座っている。どこかで一杯やってきた帰りなのだろう。

頬がうっすら赤く、姿勢もゆるんでいて、声の大きさだけが車内の静けさと合っていなかった。

「だからさ、あそこで止められると先に進まないんだって」

「わかる。結局こっちが直すことになるんだよな」

最初は、よくある光景だと思っていた。

飲んだ帰りに気が大きくなるのは、誰にでもあることだ。

けれど、話は少しずつ細かくなっていった。誰の担当がどこまで進んでいて、どこで滞っているのか。愚痴のようでもあり、慰め合いのようでもある。

ただ、そこに出てくる中身は、明らかに社内でしか話さないはずのものだった。

「上の人がまた話を変えたんだろ」

「そう。先週に決めたことなのにな」

私は目を伏せた。聞きたくて聞いているわけではない。それでも、向かいの席から届く声は、耳のすぐそばで話されているのと変わらなかった。

周りの乗客も、窓の外を見ているふりをしながら、たぶん同じように聞いている。

誰も注意はしないし、そもそも注意するほどのことでもない。ただ、居心地だけが少しずつ悪くなっていった。

集団の一人が、ふと車内を見回した

やがて、会社の名前らしき言葉が会話に混じった。

続けて、取引先らしき名前も出た。

ここまで分かってしまうのか、と思った。

私は目を閉じたが、耳はふさげない。

悪気がないのは分かる。ただ、外で話すことではない、とだけ思っていた。

そのときだった。集団のなかの一人が、話の輪から少し身を引いて、車内をゆっくり見回した。

つり革につかまった人が視線を落とし、隣の座席の人が本から目を上げる。

誰も何も言わないのに、たしかにそこにある空気に、彼は気づいたようだった。

「その話はやめろ、もう降りるぞ」

短い一言だった。

責めるでもなく、慌てるでもない。当たり前のことを確かめるような言い方だった。

「ああ、もうそんな時間か」

仲間たちは一瞬きょとんとして、それから鞄を引き寄せ、上着の袖に腕を通しはじめた。

声はそこで止まり、あとはレールの音だけが残った。彼らはほどなく静かに降りていき、車内は元の静けさを取り戻した。険しい空気は、どこにも残らなかった。

気が緩んでいただけの人たちなのだと思う。私だって、疲れた日には口が軽くなる。

それでも、あの一人が顔を上げてくれたから、私はそれ以上、聞かずに済んだ。あの人がいてよかった、と胸の内でつぶやいた。

※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。

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