Share
「お弁当は後だ。まだ走ってるぞ」徒競走で転んだ子が立ち上がり、会場に拍手が広がった瞬間

「お弁当は後だ。まだ走ってるぞ」徒競走で転んだ子が立ち上がり、会場に拍手が広がった瞬間
白線の前に四人が並ぶ
子どもの通う小学校で、運動会が開かれた日のことです。
午前最後の競技は、低学年の徒競走でした。競技が終われば、そのまま昼食休憩に入る予定です。
お昼が近づき、保護者席では水筒を取り出したり、レジャーシートの上を片づけたりする人が増えていました。
私の前に座っていた家族も、足元に置いたクーラーボックスを自分たちのほうへ引き寄せています。
やがて、スタートラインに四人の子どもが並びました。
合図の音が鳴ると、四人は一斉に走り出します。
ところが、コースの半分ほどまで進んだところで、いちばん外側を走っていた子の足がもつれました。
体が前に傾き、そのまま両手と膝を地面についてしまいます。
それまで飛び交っていた声援が、ぴたりと止まりました。
一人だけ残ったコース
ほかの三人は、そのままゴールへ走っていきました。
転んだ子のそばには先生が駆け寄り、腰をかがめて声をかけています。
その子は少しの間、膝を押さえたまま動きませんでした。
けれど先生の顔を見て小さくうなずくと、自分の力でゆっくりと立ち上がりました。
手のひらについた土を払い、膝の砂も落とします。
そして、まだ張られているゴールテープのほうを見ました。
そのころ、先に走った三人はすでにゴールしています。
午前の競技が終わったと思ったのか、保護者席では立ち上がる人や、お弁当を取り出そうとする人が出始めていました。
私の前にいた家族の子どもも、クーラーボックスの留め具に手をかけます。
すると、お父さんがコースを指さして言いました。
「お弁当は後だ。まだ走ってるぞ」
その声に、周りの人たちも再びコースへ目を向けました。
最後まで走り切った姿
転んだ子は、もう一度走り始めていました。
最初は足をかばうような小さな歩幅でしたが、少しずつ速くなっていきます。
誰かが手を叩きました。
その音に続くように、保護者席のあちこちから拍手が広がっていきます。
「頑張れ!」
「あと少しだよ!」
その子は声援に押されるように腕を振り、ゴールへ向かって進みました。
ゴールテープの前では、先生たちがそのまま待っています。
そして、その子が最後まで走り切ってテープを越えた瞬間、会場から大きな拍手が起こりました。
先生はすぐに駆け寄り、その子の膝の様子を確認しています。
先にゴールしていた子どもたちも、少し離れた場所から手を叩いていました。
順位とは関係なく、諦めずにゴールまで進んだ姿に、会場全体が声援を送っていたのです。
その直後、昼食休憩を知らせる放送が流れました。
前にいたお父さんは、コースから目を離してから、ようやくクーラーボックスの蓋を開けます。
「今度こそ、お弁当にしようか」
家族が笑いながらうなずくのを見て、私も静かに拍手をやめました。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
ほかの小説も読む
CHARACTERS
登場人物から探す
THEME
テーマ・シチュエーションから探す
ENDING
結末から探す
最も人気の短編小説
もっと見る >スカッとする短編小説
もっと見る >モヤモヤ短編小説
もっと見る >ゾッとする短編小説
もっと見る >LINEの短編小説
もっと見る >実体験をもとにした短編小説
もっと見る >恋愛トラブル
もっと見る >ハラスメント
もっと見る >金銭トラブル
もっと見る >浮気・不倫
もっと見る >迷惑
もっと見る >仕事のトラブル
もっと見る >非常識
もっと見る >LINE誤爆
もっと見る >思わず気持ちが晴れた「スカッと」
思い出しても背筋が凍る「ゾッと」
その感情を、物語にしませんか。
GLAMでは、あなたのリアルな体験エピソードを
お待ちしています。

GLAM Lifestyle Editorial
編集部
日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
Feature
特集記事


