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「身長はお持ちですか」言い間違えて固まった店員。だが、客の一言で空気が和らいだ理由とは

朝から続いた3回の言い間違い
その日は朝から、口がうまく回りませんでした。
開店したばかりなのに、レジにはもう常連さんの列ができています。
「いらっしゃいませ。あ、ありがとうございました」
「順番、逆よ」
会計を終えたお客さんに笑われて、頭を下げました。これが1回目です。
2回目は、その5分後でした。
「レジ袋はご利用ですか。あ、傘は……失礼しました」
前の晩が雨だったせいで、傘立ての言葉が口をついて出たようでした。
手はスキャンを続けているのに、頭のどこかが半歩遅れています。
前の日から寝つけず、朝ごはんも喉を通っていませんでした。
そして、問題の3回目が来ます。
カゴに牛乳と食パンを入れた、50代くらいの男性のお客さんでした。
無口な人で、こちらを見ずに財布を開いています。
合計を読み上げて、いつもの流れで口が動きました。
「身長はお持ちですか」
言い終わってから、自分の声が耳に戻ってきました。
正しくはポイントカード。
毎日、何百回も言っている言葉です。
顔から首まで一気に熱くなって、指先が止まりました。後ろには5人ほど並んでいます。
訂正の言葉が、どうしても出てきません。
頭を指さしたお客さん
沈黙を破ったのは、目の前のお客さんでした。
「ああ、持ってますよ」
そう言って、自分の頭のてっぺんを、人差し指でまっすぐ指したのです。
「たぶん、170くらい」
ふざけている顔ではありませんでした。値段を確認するときと同じ、落ち着いた調子で答えてくれたのです。
一拍おいて、後ろの列から吹き出す声がしました。
「じゃあ私は155ね」
「うちの旦那、それより低いわよ」
並んでいた人たちが、次々に自分の身長を申告し始めました。
さっきまで急いでいたはずの列が、ゆるく崩れていきます。
腕時計ばかり気にしていた人まで、肩の力を抜いて笑っていました。
「……ポイントカードです。失礼しました」
「分かってましたよ」
お客さんは財布からカードを出して、こちらに差し出しました。受け取る指は、もう震えていませんでした。
「お待たせして、すみませんでした」
「いや、朝から笑えて得したから」
袋を提げて、その人は普通に帰っていきました。からかわれた感じは、どこにも残っていません。
休憩室に戻って、チーフに白状しました。
「お客さんに『身長はお持ちですか』って聞いてしまいました」
「え、それ、お客さんの前で?」
「はっきり言いました」
チーフは声を上げて笑って、それから背中を叩いていきました。
午後のレジは、朝より少しだけ軽く打てたのです。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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