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「その本の作者は」書店で隣に立ち手にした本の内容をつぶやき続けた男→正面向いたまま動かない姿に戦慄

その本の作者は書店で隣に立ち手にした本の内容をつぶやき続けた男→正面向いたまま動かない姿に戦慄

気配なく真横に立った男

仕事帰り、駅前の大型書店に寄って小説のコーナーをのぞいた日のことだ。

読みたかった作品を手に取り、隣の棚に並ぶ新刊の表紙を眺めていた。気になっていた装丁の本があり、手にとってじっくり帯のキャッチを読み込んでいた。

店内は平日の夜にしては空いていた。BGMの音だけが流れる静かなフロアで、客と客の距離もたっぷり取れる程度にしか人がいない。

だからこそ、近づいてくる人があれば足音や衣擦れで気付くはずだった。

そのとき、左隣に気配もなく人が立った。スーツ姿の中年男性だった。普通の客なら本棚に手を伸ばすか目線を本に落とすはずだが、その男はじっと真正面を向いたまま動かない。

手ぶらで、店内バッグも下げていなかった。

嫌な感じがして、私は一歩右へずれた。

手にしていた本の表紙を眺めていると、隣の男との距離もまた一歩分縮まっている。私が動いた分だけ、男も同じだけ動いていた。

さらに半歩右に避けてみると、男も同じ歩幅で半歩寄せてきた。

延々と続いた異常なつぶやき

横目でちらりと見ると、男はやはり棚を見ていない。

視線は私の手元の本に向いていた。そして口元だけが小さく動き、何かをずっと呟いている。

「その本の作者は…」

はっきり聞き取れたのはその一言だった。男は真正面を向いたまま、私が手にした本のあらすじや作者の経歴を、暗唱するように低い声で読み上げ続けていた。

本の中身を熟知している話し方だった。

私の指がページに触れたタイミングで声が止まり、私が次のページをめくると、また続きの内容を呟き始める。

リズムが完全に私の動きに合わせて変化していた。背筋が冷たくなり、手にした本を棚に戻そうとした瞬間、男のつぶやきも同時に止まった。

試しに、隣の棚にあった別の作家の本を手に取ってみた。

男はゆっくりと身体ごと向きを変え、また私の半歩左にぴたりと並ぶ。今度はその新しい本の作者の生い立ちや過去の代表作を、淀みのない口調で読み上げ始めた。

書店のスタッフのような知識量だったが、声には抑揚も感情もなかった。

怖くなって、私は本を置かずにそのままレジに向かった。会計を済ませて店を出るまでの数十秒、振り返らないようにするのが精一杯だった。

改札に着くまで、誰かの足音が後ろから付いてくるような錯覚がずっと残っていた。あの男が同じ作家のコーナーで毎日同じことをしているのか、書店スタッフが気付いているのか、もう確かめる気にもなれない。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。

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