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「こんな場所で食うなよ」やっと座れたと喜んだ帰り道。だが、近くの乗客の行動に絶句

「こんな場所で食うなよ」やっと座れたと喜んだ帰り道。だが、近くの乗客の行動に絶句
やっと座れた、と思った帰り道
仕事帰りの電車で座れることは、私にはほとんどない。
その日も期待などしていなかったのに、席が少し空いていた。
滑り込むように腰を下ろし、鞄を膝に抱えた瞬間、肩から力が抜けていくのがわかった。
「今日はついてるな」
目を閉じていれば、家に着くまでの短い休みが手に入る。
そう思っていた矢先、隣から鞄をかき回すような音がした。
ビニールの擦れる音、硬いものが触れ合う音。何気なく視線を落とすと、隣の人が缶の飲み物と袋入りのつまみを取り出したところだった。
(こんな場所で食うなよ)
プシュッという音が、車内の静けさに妙に大きく響いた。
それでも、静かに飲んで食べているだけならまだましだと、自分に言い聞かせた。目くじらを立てるようなことではない。そう思い込もうとした。
音が消えない、それでも誰も何も言わない
けれど、その考えはすぐに崩れた。
隣の人は、口を開けたまま噛む人だった。
くちゃ、くちゃ、という音が規則正しく耳に届く。合間に缶をあおる音が挟まり、また噛む音が戻ってくる。
走行音に紛れて消えるどころか、その音だけがくっきりと浮かび上がってきた。
「聞かないようにすればいい」
鞄から本を取り出して開いた。
文字を追うふりをしながら、同じ行を何度も目でなぞっていた。
内容はまるで頭に入ってこない。音が鳴るたび、体のどこかがびくりと反応した。
顔を上げると、向かいの人が一瞬こちらを見て、すぐに視線を落とした。少し離れた席の人も、眉のあたりをかすかに動かしただけで黙っている。
気づいているのは自分だけではない。それがわかっても、車内は何も変わらなかった。
「やめてもらえませんか」
頭の中では何度も言えた。それでも口は動かなかった。
言ったあとの空気を想像するだけで、喉が閉じた。
そのうちにゲップの音まで加わって、もう休むどころではない。
せっかく座れた席が、いちばん逃げ場のない場所に変わっていた。
「もう、いいか」
電車が止まって扉が開いたとき、私は立ち上がった。
隣を見ないまま、そのまま隣の車両へ移った。つり革につかまって立った瞬間、ようやく耳が静かになった。
地獄のような時間から抜け出せたのに、勝った気持ちにはならなかった。
座れた喜びは、もうどこにも残っていなかった。
「座れたら得だと思っていたのに」
それ以来、電車で空いた席を見つけても、すぐには座れなくなった。
腰を下ろす前に、隣にいるのがどんな人か、鞄の口が開いていないかを、つい確かめてしまう。あの夜から、座るという行為が、少しだけ身構えるものになった。
※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた20代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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