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「まあ座れ、お菓子でも食べていけ」なかなか会えない息子と私を間違えた叔父。その日だけ私が答えた言葉とは

「まあ座れ、お菓子でも食べていけ」なかなか会えない息子と私を間違えた叔父。その日だけ私が答えた言葉とは

玄関先で、叔父は私の名前を思い出せませんでした

法事の帰り、私は久しぶりに叔父の家へ立ち寄りました。

父の兄にあたる人で、子どものころは夏休みになると何度も泊まりに行った家です。

呼び鈴を押して少し待つと、引き戸が開きました。

叔父は私の顔をじっと見つめたあと、困ったような表情を浮かべました。

「誰さんだったかな」

叔父の物忘れが増えていることは、親戚から聞いていました。

実の息子である従兄弟のことも、すぐには分からない日があるそうです。

従兄弟は県外で仕事をしていて、以前のように頻繁には帰省できません。叔父もきっと、息子が帰ってくるのを心待ちにしているのでしょう。

私が自分の名前を伝えようとした、そのときでした。

叔父の顔がぱっと明るくなりました。

「なんだ、帰ってきたのか」

その言葉を聞いて、私はすぐに気づきました。叔父は目の前にいる私を、息子だと思っているのです。

「違うよ」と訂正しかけましたが、うれしそうな叔父の表情を見ると、言葉が止まりました。

ほんの少しの間なら、このままでもいいのではないか。そう思った私は、笑って答えました。

「うん、帰ってきたよ」

すると叔父は安心したようにうなずき、私を家の中へ招いてくれました。

「まあ座れ」と出してくれた、いつものお菓子

「まあ座れ、お菓子でも食べていけ」

叔父は戸棚を開け、煎餅の袋を持ってきました。そして湯呑みにお茶を注ぎ、私の前へ置いてくれました。

その光景を見ていると、子どものころを思い出しました。

遊びに行くたび、叔父は同じようにお菓子を出してくれたものです。

座卓を挟みながら、叔父は庭の木のことや、最近は朝早く目が覚めることなどを話しました。

同じ話を何度か繰り返すこともありましたが、私はそのたびに初めて聞いたように相づちを打ちました。

しばらくすると、叔父が私に聞きました。

「仕事はどうだ。無理してないか」

きっと、本当は息子に聞きたかった言葉なのでしょう。

私は少し迷ってから答えました。

「ちゃんとやってるよ。心配いらないよ」

叔父は「そうか」と小さくうなずきました。その表情があまりに穏やかで、私は訂正しなくてよかったのかもしれないと思いました。

帰り道、本当の息子に伝えようと思いました

帰るころには、外は夕方の色に変わっていました。

叔父は玄関まで見送りに来て、私が靴を履くのをじっと見ていました。

「またな」

そう言って、胸の前で小さく手を振ります。私も同じように手を振り返しました。

家を離れて駅へ向かいながら、私は従兄弟に連絡しようと思いました。

今日、叔父がとてもうれしそうだったこと。煎餅とお茶を出してくれたこと。そして、息子が帰ってきたと思いながら、穏やかな時間を過ごしていたこと。

叔父が私にかけてくれた言葉は、本当は従兄弟に向けたものです。

その日だけ私は、その言葉を預かったのだと思うことにしました。

※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた40代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています。

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。

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