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「ここはね、ゆっくり温まるところやで」温泉で騒いでしまった子供。だが、年配の女性の一言で場が和んだ瞬間

家族旅行の大浴場で
その年の夏、私は家族そろって、山あいの温泉地の旅館へと出かけました。
旅の何よりの楽しみは、なんといっても、広々とした露天風呂にゆっくりとつかることです。
夕食の前のひととき、私は当時まだ三歳だった子どもの手を引いて、大浴場へと向かいました。
ほのかに湯気の立ちのぼる、思わず声が出るほど広々とした浴場です。
脱衣所で手早く支度を終え、いよいよ浴場の引き戸を開けた、まさにそのときのことでした。
「プールだ!」
目の前いっぱいに広がる大きな湯船を見て、子どもがぱっと目を輝かせたのです。
そのまま、ぬれてすべりやすい床を、今にも駆け出そうとしたので、私は思わずひやりとしました。
年配の女性の一言
転んでしまう、とあわてて手を伸ばしかけた私よりも先に、すぐ近くの年配の女性が、実におだやかな声で、子どもへ話しかけてくれました。
頭ごなしに叱るのではなく、そっと言い聞かせて教えさとすような、やさしい声でした。
「ここはね、ゆっくり温まるところやで」
不思議なもので、子どもはそのひと言に、こくりと素直にうなずきました。
そして「そうなんだ」と、まるで魔法にでもかかったように、すっかり落ち着いてくれたのです。
親の言うことよりも、見知らぬ方のやわらかな声のほうが、すんなりと胸に届くこともあるのですね。
場がふっと和んで
はりつめかけていた浴場の空気が、そのひと言で、ふっとやわらかくゆるみました。
周りで様子を見守っていた方々も、思わずといった様子で、やさしい笑みをこぼしています。
子どもは私と手をしっかりつなぎ、今度はそろそろと湯船に近づいて、おそるおそる小さな足を湯にひたしました。
「あったかいねえ」と、心の底からうれしそうにつぶやきます。
温かい湯にゆっくりとつかりながら、私は胸の内で、あの女性にそっと手を合わせました。
旅の景色も料理も、たしかにすばらしかったけれど、いちばん心に残ったのは、こうして見知らぬ人がふとみせてくれる、さりげない優しさでした。
見知らぬ人どうしが、湯の中でふと交わすやさしさ。
それこそが、温泉という場所のいちばんの贈りものなのかもしれません。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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