Share
「冷蔵庫を運ぶのは、男の仕事だろう」骨折した右手を見せた私に、義父が返した言葉に絶句

添え木のついた指
年末に妻の実家へ帰りました。
その少し前、自分の部屋を片づけていて足を滑らせ、右手の指を骨折していました。添え木と包帯はまだそのままです。
「まあ、大変だったねえ」
玄関で義母がそう言い、妻の兄夫婦と従兄も口々に同じことを言ってくれました。荷物は左手で持って上がりました。
大掃除は毎年の行事だそうです。
障子の張り替えと窓拭き、それから台所の奥まで、朝から順に片づけていきます。
お昼を回ったころ、台所の奥から義父の声が飛びました。
「そっちの若いの、こっち手伝ってくれ」
見せた右手
行ってみると、義父が冷蔵庫の脇に立っていました。裏の床を拭くから前へ出したい、ということでした。
「冷蔵庫を運ぶのは、男の仕事だろう」
私は右手を持ち上げて見せました。
包帯は、廊下の蛍光灯の下でよく目立ったはずです。
「すみません、先週折ってしまって」
「気合で何とかなる」
言葉が続きませんでした。
「そのくらい大丈夫だろう。若いんだから」
居間のほうで、テレビの音量が少し上がりました。従兄はカーテンをたたむ手を止めず、妻の兄も雑巾を絞ったままこちらを見ません。
台所に居た義母も、鍋の蓋を持ったまま何も言いませんでした。
結局は、義兄と従兄の二人が冷蔵庫を前に出しました。私は玄関先の段ボールを左手で運びました。誰も、あとからその話には触れませんでした。
消えなかった言葉
夕食の席で、義父は上機嫌でした。今年は例年より早く終わった、と何度も言っています。
「来年は障子を全部替えような」
「そうですね」
私はそう答えました。
それ以外の言い方を、この人の前ではまだ知りません。
布団に入ってからも、天井を見ていました。骨折を疑われたわけではないと思います。悪気があったわけでもないのでしょう。それでも、包帯を見せたあとに返ってきた言葉が、暗い部屋の中で何度も再生されました。
隣で妻の寝息が聞こえます。台所の換気扇が、低い音を立て続けていました。
翌日の帰り道、高速に乗ってから妻が言いました。
「お父さん、ああいう人だから」
「うん」
「気にしないでいいよ」
それにも「うん」と返しました。右手の添え木は、あと二週間はこのままです。年が明けたら病院へ行く、それだけを考えていました。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
ほかの小説も読む
CHARACTERS
登場人物から探す
THEME
テーマ・シチュエーションから探す
ENDING
結末から探す
最も人気の短編小説
もっと見る >スカッとする短編小説
もっと見る >モヤモヤ短編小説
もっと見る >ゾッとする短編小説
もっと見る >LINEの短編小説
もっと見る >実体験をもとにした短編小説
もっと見る >恋愛トラブル
もっと見る >ハラスメント
もっと見る >金銭トラブル
もっと見る >浮気・不倫
もっと見る >迷惑
もっと見る >仕事のトラブル
もっと見る >非常識
もっと見る >LINE誤爆
もっと見る >思わず気持ちが晴れた「スカッと」
思い出しても背筋が凍る「ゾッと」
その感情を、物語にしませんか。
GLAMでは、あなたのリアルな体験エピソードを
お待ちしています。

GLAM Lifestyle Editorial
編集部
日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
Feature
特集記事


