Share
「煙、こっちに来てるね」公園でBBQをしていた家族。だが、10分後に片付けを始めたワケ

「煙、こっちに来てるね」公園でBBQをしていた家族。だが、10分後に片付けを始めたワケ
ベンチから見えた白い煙
週末の朝、自宅近くの大きな公園をいつものように歩いていました。一周して原っぱの端のベンチで休むのが、長年の習慣です。
その日は家族連れが多く、シートやテントがいくつも広がっています。タオルで汗を拭いていると、肉の焼ける匂いが流れてきました。
顔を上げると、原っぱの真ん中から白い煙が上がっていました。数組の家族がコンロを囲んでいます。
「そっちの網、そろそろ野菜も乗せてくれ」
「先に肉だろ」
声は、ベンチのあたりまで届いていました。大人たちはコンロの前から動きません。子どもたちは離れた遊具へ走っていきましたが、誰もそちらを見ていませんでした。
隣のシートにいた家族が、広げた荷物をまとめ始めます。
「煙、こっちに来てるね」
「向こうに移ろうか」
原っぱに立つ大きな看板
原っぱの入口には、大人の背丈ほどの看板が立っています。火気厳禁、バーベキューおよび花火禁止。赤い枠の文字は、ベンチからでも読めました。
隣で缶コーヒーを飲んでいた年配の男性が、そちらへ顎を向けます。
「あの看板の、すぐ横だよ」
「見えていないんでしょうね」
周りのシートからは、苦笑いと呆れ顔が向けられます。それでも誰も立ち上がりません。
10分後の原っぱ
ベンチに座ってから、10分も経たないうちでした。管理事務所のベストを着た人が3人、原っぱを横切っていきます。
コンロを囲んでいた大人たちが振り返ります。職員のひとりが、入口の看板を指しました。
「BBQは禁止だと、看板に書いてある」
怒鳴り声ではありませんでした。よく通る、落ち着いた声です。
「あちらにも、入口にも出ています」
缶を持った手が止まりました。男性は看板へ首を回し、何か言いかけて、そのまま口を閉じます。
「知らなかったもので」
「火の始末までお願いします。水はあちらの手洗い場で」
返事はありません。網が外され、トングが袋にしまわれ、テントの支柱が畳まれていきます。誰もこちらを見ませんでした。
荷物をまとめかけていた隣の家族が、腰を下ろし直します。
「移らなくてよくなったね」
遊具から戻ってきた子どもたちが、大人の背中に何か話しかけています。片づけの手は止まりません。10分前までいちばん大きかった声は、もう聞こえませんでした。
水筒の残りを飲んで、ベンチを立ちます。赤い枠の看板は、さっきと同じ場所に立っていました。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
ほかの小説も読む
CHARACTERS
登場人物から探す
THEME
テーマ・シチュエーションから探す
ENDING
結末から探す
最も人気の短編小説
もっと見る >スカッとする短編小説
もっと見る >モヤモヤ短編小説
もっと見る >ゾッとする短編小説
もっと見る >LINEの短編小説
もっと見る >実体験をもとにした短編小説
もっと見る >恋愛トラブル
もっと見る >ハラスメント
もっと見る >金銭トラブル
もっと見る >浮気・不倫
もっと見る >迷惑
もっと見る >仕事のトラブル
もっと見る >非常識
もっと見る >LINE誤爆
もっと見る >思わず気持ちが晴れた「スカッと」
思い出しても背筋が凍る「ゾッと」
その感情を、物語にしませんか。
GLAMでは、あなたのリアルな体験エピソードを
お待ちしています。

GLAM Lifestyle Editorial
編集部
日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
Feature
特集記事


