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「君が作ったのじゃないと嫌だ」混雑した店内で無理を言う客。だが、店長が穏やかに示した正論で状況が一変

「君が作ったのじゃないと嫌だ」混雑した店内で無理を言う客。だが、店長が穏やかに示した正論で状況が一変
窓際の同じ席
学生のころ、商店街のカフェで働いていました。
平日の午後になると、決まって窓際のいちばん奥の席に座る年配の男性がいます。
注文はいつも同じブレンドで、頼み方まで一言一句変わりません。
ただ、レジに来るたびに私の名前を確かめたがりました。
「君、今日は名前を変えたのかい」
「いえ、ずっとこの名札のままです」
「そうか。覚えられなくて困るなあ」
冗談なのか本気なのか、こちらには判断がつきません。悪気がないのは伝わってくるので、笑って受け流すのが私の役目のようになっていました。
それでも、忙しい時間帯に世間話が長引くと、次の会計が待ってしまいます。
止まったカウンター
その日は雨で、店内の席がすべて埋まっていました。
ホールの人手が足りず、私はレジとドリンクの台を行ったり来たりしています。男性が来店したのは、注文の伝票が5枚たまった時でした。
いつもの席が空いていないので、彼はカウンターの端で待つことになります。
「ブレンドを一つ、いつもの濃さでね」
先に手の空いた同僚が、すぐにカップを用意して差し出しました。
「君が作ったのじゃないと嫌だ」
受け取る気配がありません。同僚はカップを差し出したままの姿勢で、私のほうを見ました。
「少しお時間をいただきます。申し訳ございません」
私の手はレジから離せず、カウンターの前で列が止まります。近くの席の人たちが、何事かとこちらを向きました。
店長が置いた一杯
奥から店長が出てきて、カップの横に立ちました。
「いつもありがとうございます。当店は、スタッフ全員が同じレシピで作っております」
「そうは言ってもね、味が違う気がするんだ」
「豆の量も、湯の温度も、蒸らす時間も同じです。どうぞご安心ください」
声を張ることも、押し返すこともない話し方でした。男性は少しだけ迷ってから、同僚の差し出したカップを受け取ります。
一口飲んで、それから小さくうなずきました。カップを両手で包むしぐさは、いつも窓際の席で見ていたものと同じです。
「うん、いつもの味だ」
「ありがとうございます。またお待ちしております」
止まっていた列が、また前へ動き出します。私は次の会計に戻り、伝票の束はゆっくり減っていきました。
「あの方は、あなたを困らせたくて言っているわけじゃないよ」
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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GLAM Lifestyle Editorial
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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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