Share
「この値段はおかしい、安いはずだろ」レジで特売を主張する客。だが、店長の説明で勘違いが発覚

夕方のレジに伸びた列
高校生のころ、近所のスーパーでレジのアルバイトをしていました。
夕方の五時を過ぎると仕事帰りの人が一気に増えて、かごが台の上に積み上がっていきます。
その日も五十代くらいの男性が、かごを押し込むように置きました。
豆腐や卵を順番に通し、袋詰め台のほうへ移していきます。
「お会計、2680円になります」
硬貨を数え終えたところで、声の調子が変わりました。
「この値段はおかしい、安いはずだろ」
「恐れ入ります。どちらの商品でしょうか」
「これだよ。ここはいつも安いだろうが」
手が止まりました。値札を確かめても、その日の特売の対象になっている商品はひとつもありません。
通常価格ですと伝えた声
後ろの列が、少しずつ長くなっていくのが見えました。息を一度吸ってから、できるだけ落ち着いた声を出します。
「申し訳ありません。こちらは通常価格となっております」
「そんなわけあるか。先週はもっと安かったぞ」
「本日は特売の対象になっておりません」
「決まりだ決まりだって、そればっかりだな」
台の上のかごを、指の先で何度も叩かれました。
周りの視線が集まっているのが分かって、耳の奥が熱くなります。
店長が並べた二枚の札
サービスカウンターから店長が歩いてきて、私の横に立ちました。
走ってくるでも、慌てるでもありません。
「お待たせしました。値段の件をうかがいます」
店長は売り場へ戻ると、黄色い特売の札と、白い通常価格の札を一枚ずつ持って帰ってきました。
それを台の上に並べて置きます。
「本日、黄色い札が付いているのはこちらの棚だけです。お買い上げの品は、すべて白い札の棚のものでした」
男性の目が、二枚の札の間を行き来しました。
「……いや、俺は先週の話をだな」
「先週の特売は、先週で終了しております」
言いかけた言葉が、そこで途切れます。
後ろに並んでいた年配の女性が、小さくうなずいたのが見えました。ほかにも同じ方向を見ている人が何人かいます。
「……もういい」
男性は札から目をそらし、袋を抱えて出口へ向かいました。振り返ることはありません。
「よく最後まで同じ説明を続けたな」
「間違ってないか、途中で分からなくなりました」
「間違ってない。札が証拠だよ」
店長は二枚の札を揃えて、売り場へ戻っていきました。列はまた前へ動きだします。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、20代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
ほかの小説も読む
CHARACTERS
登場人物から探す
THEME
テーマ・シチュエーションから探す
ENDING
結末から探す
最も人気の短編小説
もっと見る >スカッとする短編小説
もっと見る >モヤモヤ短編小説
もっと見る >ゾッとする短編小説
もっと見る >LINEの短編小説
もっと見る >実体験をもとにした短編小説
もっと見る >恋愛トラブル
もっと見る >ハラスメント
もっと見る >金銭トラブル
もっと見る >浮気・不倫
もっと見る >迷惑
もっと見る >仕事のトラブル
もっと見る >非常識
もっと見る >LINE誤爆
もっと見る >思わず気持ちが晴れた「スカッと」
思い出しても背筋が凍る「ゾッと」
その感情を、物語にしませんか。
GLAMでは、あなたのリアルな体験エピソードを
お待ちしています。

GLAM Lifestyle Editorial
編集部
日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
Feature
特集記事


