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「小銭で出すから、数えてくれ」カウンターに小銭を大量に出した客。だが、客の態度を変えた、店員の対応

朝のレジに広がった小銭
出勤前に寄ったコンビニで、レジに並びました。
私の前にいたのは、上着を腕にかけた男性です。
会計の金額を告げられると、男性は財布の小銭入れを逆さにしました。
じゃら、と音を立てて、硬貨がカウンター一面に広がっていきます。
「小銭で出すから、数えてくれ」
数えるだけで、しばらくかかりそうな量です。
店員は一瞬だけ目を見開きましたが、すぐに表情を戻しました。
「かしこまりました」
そう言って、レジ横のトレーを手元へ引き寄せます。
私は思わず、店の時計を見上げました。
「では、ご一緒に数えさせていただきますね」
男性は腕を組んで、カウンターに寄りかかりました。
「そっちの仕事だろ」
店員はうなずきも、否定もしませんでした。ただ、指先で一枚目をつまみ上げます。
私の後ろにも、二人ほど並びました。舌打ちをする人はいません。
レジの前で何が起きているのか、みんな気づいているようでした。
一枚ずつ、声に出して
「一円、二円、三円……」
一枚動かすたびに、店員は数を声に出しました。急ぐでもなく、嫌そうでもなく、同じ調子です。
「十円、十一円、十二円……」
硬貨がトレーの中で、少しずつ山になっていきます。
男性は最初、そっぽを向いていました。
けれど数が四十を超えたあたりから、視線がカウンターの上へ戻ってきます。
「……五十三円、五十四円、五十五円」
組んでいた腕が、いつのまにかほどけていました。
男性は指を伸ばして、離れたところに転がっていた硬貨を一枚、店員の手元へ寄せます。
「こっちも、やるわ」
「助かります。では、そちらを先にお願いできますか」
二人分の指が、カウンターの上で動きました。
店員が数え、男性が寄せる。後ろに並んだ私も、いつの間にか一緒に数を追っていました。
男性の指先は、薄い硬貨をつまむのに何度か滑りました。それでも、途中で手を引っ込めることはありません。
「……ちょうど、お預かりいたします」
男性は袋を受け取ると、少しだけ顔を伏せました。
「悪かったね、手間かけて」
「とんでもございません。またお越しくださいませ」
店員の声は、最初に「かしこまりました」と言ったときと同じ高さでした。
男性は自動ドアの手前で一度立ち止まり、小さく頭を下げて出ていきます。
私の番が来ると、店員は何事もなかったように商品を通しました。
外に出てガラス越しに振り返ると、店員は次の客へ頭を下げているところでした。さっきと、まったく同じ角度でした。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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