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「電車の床に置いていく、拾えばいい」ゴミを残し足を投げ出した男性客に、私が声も出せず車両を移った朝

「電車の床に置いていく、拾えばいい」ゴミを残し足を投げ出した男性客に、私が声も出せず車両を移った朝
朝の車内に響いた声
二年前の朝、いつもの通勤電車でのことです。車内は肩が触れ合うほど混み合っていて、みんなが黙って揺られていました。ドアが閉まってすぐ、その静けさを破るように、車両の真ん中あたりから大きな声が聞こえてきました。
「あ? 今どこって、電車だよ」
座席に浅く腰かけた五十代くらいの男性が、スマートフォンをスピーカーにして話しています。相手の声まで車内に漏れていて、周りの人が一斉にそちらを見ました。
「うるさい? 知るか、そっちが聞こえないんだろ」
怒鳴るような声は、車両の端まで届いていました。近くに立っていた学生が、そっとイヤホンを押さえます。誰もが迷惑そうな顔をしながら、それでも黙って耐えていました。
床に置かれた袋
男性は通路に長く足を投げ出したまま、コンビニの袋を膝の上で広げました。おにぎりの包みを開け、ゆっくりと食べ終わると、その袋を足元の床にそのまま置いたのです。中身の残った包み紙が、袋の口からのぞいていました。
「あの、それ……」
近くにいた誰かが、思いきったように言いかけて、やめました。私も同じでした。注意しなければと思うのに、声が喉の奥で止まってしまうのです。
男性は電話を続けたまま、床の袋を顎で示すようにして言い放ちました。
「電車の床に置いていく、拾えばいい」
その一言で、周りの空気がすっと固まったのが分かりました。男性の周りだけ、人が半歩ずつ、そっと離れていきます。
言えないまま、次の駅で
誰かが注意してくれないだろうか。そう思いながら、結局、誰も動けずにいました。迷惑そうな顔をした人はたくさんいたのに、声に出す人はひとりもいません。私も、吊り革を握り直すだけで精一杯でした。
男性は足を投げ出したまま、また次の通話を始めています。床の袋は、置かれたままです。次の駅に着くと、私は逃げるように隣の車両へ移りました。ドアが閉まる直前、袋がまだ床に残っているのが見えました。
あのとき、ひとことでも言えたらよかったのか。公共の場でマナーを守らない人を見ると本当に残念な気持ちになりますが、あんな人を見たのは初めてで、今でも答えは出ないままです。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、50代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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