Share
「人前で愛称で呼ぶのはやめて」祖母から届いた手紙。笑顔の裏に隠れていた本音に絶句

「人前で愛称で呼ぶのはやめて」祖母から届いた手紙。笑顔の裏に隠れていた本音に絶句
祖母の家で、オムツを替えた三十分
息子の首がやっと座った頃、夫の祖母の家へ顔見せに行きました。
「まあ、よく来たねえ。大きくなって」
座布団を並べて迎えてくれた祖母は、九十を過ぎているとは思えないほど背筋がまっすぐで、声にも張りがありました。
庭の音がよく通る、静かな家です。
お茶をいただいて三十分ほど経った頃でしょうか。腕の中の息子がぐずり出して、抱き直すとオムツがずっしり重くなっていました。
「ちょっと◯◯くん(愛称)、カバンのオムツ取って」
夫のことを、私は結婚前からそう呼んでいます。ただの呼び癖でした。
「はいはい。おしり拭きもいる?」
畳の隅にタオルを敷いて、手早く替えました。
夫がゴミ袋を広げて、口を縛ってくれます。祖母はその間、湯呑みを両手で包んだまま、こちらを見ていました。にこにこと、それだけです。
「すみません、お騒がせして」
「いいのいいの。赤ん坊は、そういうもんだから」
その言葉に甘えて、私たちはもう一杯お茶をいただきました。
「ひ孫の顔が見られて、よかったよ」
玄関でそう言って、祖母は小さく手を振ってくれました。何ごともない、穏やかな午後だったのです。
十日後、義母の家に便箋が三枚
「あのね、おばあちゃんから手紙が来たんだけど」
電話越しの義母の声は、いつもより低く聞こえました。
週末に義母の家へ行くと、便箋があります。
かすれ一つない、細い万年筆の字でした。
「人前で愛称で呼ぶのはやめて」
読み上げた義母が、そこで一度、言葉を切ります。
「それから、オムツ替えを夫に手伝わせるべきではない、って」
指先が、便箋の上で止まりました。
あの日、祖母は何も言わなかったのです。お茶を勧めて、息子の頬をつついて、笑って見送ってくれただけでした。
「私、あの場では一言も言われなくて」
「そうよね。おばあちゃん、昔からそういう人なの」
義母は、それ以上は説明しませんでした。
あの三十分、湯呑みを包んだ手の向こうで、祖母は何を数えていたのでしょう。
私が夫を呼んだ声も、渡されたオムツも、ゴミ袋の結び目まで、全部見ていたということです。そして、その場では何一つ口にせず、十日かけて便箋を出した。
「返事、どうしましょう」
「…しなくていいんじゃない」
夫の祖母です。私からは、何も言えません。
それから帰省のたび、玄関で靴を脱ぐ前に、私は夫をなんと呼ぶかを確かめるようになりました。あの穏やかな笑顔の下で、今日は何が数えられているのか。手紙は、まだ一度きりです。次があるかどうかは、分かりません。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
ほかの小説も読む
CHARACTERS
登場人物から探す
THEME
テーマ・シチュエーションから探す
ENDING
結末から探す
最も人気の短編小説
もっと見る >スカッとする短編小説
もっと見る >モヤモヤ短編小説
もっと見る >ゾッとする短編小説
もっと見る >LINEの短編小説
もっと見る >実体験をもとにした短編小説
もっと見る >恋愛トラブル
もっと見る >ハラスメント
もっと見る >金銭トラブル
もっと見る >浮気・不倫
もっと見る >迷惑
もっと見る >仕事のトラブル
もっと見る >非常識
もっと見る >LINE誤爆
もっと見る >思わず気持ちが晴れた「スカッと」
思い出しても背筋が凍る「ゾッと」
その感情を、物語にしませんか。
GLAMでは、あなたのリアルな体験エピソードを
お待ちしています。

GLAM Lifestyle Editorial
編集部
日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
Feature
特集記事


