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「生姜焼き、二つで」妻の注文を飛ばした夫。だが、向かいの義父が店員を呼び戻した一言

義父の招待で入った定食屋
その日は義父が、私たち夫婦を行きつけの定食屋に誘ってくれた。
「たまには外で飯でも食おう。ここの生姜焼きはうまいぞ」
席に着くと、私は義父におしぼりを手渡した。
夫もメニューを広げて、機嫌よく義父に勧める。
「親父、遠慮なく好きなの頼んでよ」
義父は「今日は俺のおごりだ、遠慮なく食え」と、あごをしゃくって笑った。
和やかな空気に、私も肩の力が抜けていく。
義父を立てるその横顔に、私はいい食事会になりそうだと思っていた。
全員が生姜焼き定食に決まると、注文は夫が引き受けた。呼ばれた店員に、夫はよく通る声で告げる。
「生姜焼き、二つで」
私は自分の耳を疑った。二つ。その数のなかに、私は入っていない。
店員が「生姜焼き二つですね」と復唱して下がっていく。夫は平然と水を飲み、まるで隣に私がいることを忘れたようだった。
「ねえ、私の分は?」
小声で袖を引くと、夫は「あ」と間の抜けた声を出しただけだった。
けれど店員を呼び直すでもなく、夫はおしぼりで手を拭いている。私の分は、宙に浮いたままだった。
義父が店員を呼び戻した一言
厨房へ下がりかけた店員を、向かいの義父が呼び止めた。
「すみません、もう一つ頼みます」
そして夫を見据え、静かに、けれどはっきりと言った。
「生姜焼きをもう一つ。……お前、自分の女房の分を忘れてどうする」
夫の顔から、さっと血の気が引いた。
「あ、いや、頼んだつもりで…」
言い訳は途中でしぼみ、夫はそれきり黙り込んだ。呼び戻された店員も、気の毒そうに私を見て、伝票にペンを走らせている。
義父はふう、と息をついて、私に向き直った。
「悪かったね。息子がぼんやりしてて」
「いえ。お義父さんが気づいてくださって、うれしかったです」
忘れられて情けなかったぶん、庇ってもらえたことがしみた。私は下を向かず、まっすぐ義父に頭を下げた。
やがて運ばれてきた生姜焼きは、湯気の立つ三皿。ようやく食事会が始まった。
箸を進めながらも、義父はときどき夫をたしなめた。
「所帯を持ったなら、まず女房を立てるもんだ」
夫は「……はい」と、小さくなって皿に目を落としている。私はその隣で、義父の気遣いに何度も頭を下げた。
その日以来、夫は外食のたび、まず私の顔を先に見るようになった。
「お前は何にする?」
先日も、家族での食事で夫は真っ先に私の分を頼んだ。義父が「ようやく一人前だな」と笑うと、夫は照れくさそうに首をすくめる。忘れられていた席は、もうどこにもなかった。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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