Share
「ウォオオオーッ!」早朝から熱唱する隣人→朝食の準備中の事故で、隣人が黙ったワケ

壁の向こうから響く早朝の絶叫
引っ越したアパートは、壁を一枚隔てただけで隣の生活音が筒抜けでした。問題は、その壁の向こうの住人です。
「アアア〜」
朝の5時すぎ、まだ外も薄暗いうちに、寝室へいきなり叩きつけられる絶叫。
隣の人は夜勤らしく、明け方に帰ってきては、近所迷惑などお構いなしの声量で歌い出すのです。歌というより、もはや喉を絞り出すような咆哮でした。
「ねえ、今のまた歌でしょ」
「歌っていうか、もう叫びだろ。喉、心配になるレベル」
布団の中で夫と顔を見合わせるのが、いつしか朝の恒例になっていました。
「管理会社に言っちゃえば?」
「それがさ、隣、角部屋なのよ」
苦情を入れたのが私だと一発でバレる。それで隣とこじれたら、毎日顔を合わせる相手です。そう考えると、受話器に伸ばした手が止まってしまうのでした。
結局、耳栓を買い足して我慢する日々が、気づけば半年も続いていました。
握ったフライパンが、偶然
その朝も、壁の向こうのシャウトで叩き起こされました。
「ウォオオオーッ!」
「もう本当に勘弁してよ……」
寝不足のままキッチンに立ち、イライラしながらフライパンを握ったときでした。手元が乱れて、持っていたフライパンが、隣の歌が響く壁に向かって思い切り振れてしまったのです。
バン!
金属の縁が壁を叩いた音が、自分でも驚くほど部屋に響き渡りました。本当に、ただの偶然です。
「うわ、ごめ……」
誰にともなく謝りかけて、口をつぐみました。壁の向こうの絶叫が、ぴたりと途切れたのです。
一拍おいて、おそるおそる声が戻りかけました。「アア……」と、さっきの半分ほどの音量です。けれどそれも、続きを飲み込むようにすぐにしぼみ、語尾が消えていきました。残ったのは換気扇の回る音と、フライパンの中で固まりかけた卵の匂いだけです。
「……止まった?」
寝室から出てきた夫が、壁を指さして目を丸くしています。
「フライパン当たっただけだよ。わざとじゃないって」
「いや、効果てきめんじゃん」
笑いをこらえる夫の横で、私もつい吹き出してしまいました。
そして翌朝。聞こえてきたのは、隣のドアが静かに開く音と、控えめな足音だけ。あの咆哮は、一度も響いてきません。
「ねえ、今日も歌ってない」
「だな。完全に大人しくなった」
半年ぶりに、私は自分の意志で目を覚ましました。叩き起こされるのでも、耳栓を握りしめるのでもなく、ただ静かな朝が部屋に満ちている。耐える側だった私たちと、声をひそめる側になった隣人と、いつの間にか立場が入れ替わっていたのです。握り損ねたフライパン一本で取り戻したこの静けさは、今でも夫婦の笑い話になっています。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
ほかの小説も読む
CHARACTERS
登場人物から探す
THEME
テーマ・シチュエーションから探す
ENDING
結末から探す
最も人気の短編小説
もっと見る >スカッとする短編小説
もっと見る >モヤモヤ短編小説
もっと見る >ゾッとする短編小説
もっと見る >LINEの短編小説
もっと見る >実体験をもとにした短編小説
もっと見る >恋愛トラブル
もっと見る >ハラスメント
もっと見る >金銭トラブル
もっと見る >浮気・不倫
もっと見る >迷惑
もっと見る >仕事のトラブル
もっと見る >非常識
もっと見る >LINE誤爆
もっと見る >思わず気持ちが晴れた「スカッと」
思い出しても背筋が凍る「ゾッと」
その感情を、物語にしませんか。
GLAMでは、あなたのリアルな体験エピソードを
お待ちしています。

GLAM Lifestyle Editorial
編集部
日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
Feature
特集記事


