Share
「誰のおかげで暮らせてる」薔薇を持ってプロポーズしてきた男。だが、男の豹変ぶりに親族が凍りついた瞬間

大きな花束で始まった縁談
叔母は、私の親族の中でもとびきり大事に育てられた人でした。
家業で財を成した祖父母のもとで、何不自由なく育った、いわゆるお嬢様。
家事も外回りも、ほとんど人の手を借りて育ったような人です。
日傘を差して庭を歩く姿は、子どもだった私の目から見ても少し別世界の住人のように映っていました。
その叔母に縁談が持ち込まれたのは、20代も終わりに差しかかった頃でした。
相手は隣町の地主一族の長男。
広い土地と立派なお屋敷を持ち、見た目も人当たりもよい青年でした。両親と顔合わせをした夜、彼はうちのリビングに一抱えもある真っ赤な薔薇の花束を持って現れたのです。
膝をついて、まっすぐな声で叔母にプロポーズしました。叔母は頬を赤く染めて、震える指先で花束を受け取りました。
祖父母は手を取り合って涙ぐみ、私たち親戚も「絵に描いたような縁談だ」と口々に祝いました。
式は地元の名門ホテルで行われ、披露宴は親族の自慢になるほどの華やかさだったのを覚えています。
叔母は当時、これ以上ないほど幸せそうな顔をしていました。結納の席でも、彼は叔母の好物を覚えていて、こちらの母にまで気を回す気配り上手。あの晩の彼を、悪く言える人間は親族の中に一人もいなかったのです。
数年後に滲んでいた異変
異変に気づき始めたのは、結婚から3年ほど経った頃です。
法事や正月で顔を合わせるたび、叔母は明らかにやせ細っていきました。
化粧も髪型も以前のままなのに、目だけが落ちくぼんで光を失っていきます。それでも夫の隣では、必死に笑顔を作っていました。
ある法事の席で、彼は親族の前で叔母に向かって低い声で言い放ちました。
「誰のおかげで暮らせてる」
場の空気が、その一言で凍りました。
叔母は反論せず、ただ視線を膳に落として頷くだけ。私の母が慌てて話題を変えましたが、叔母の手が膝の上で小さく震えていたのを、今でも忘れられません。
後で聞いた話では、屋敷の中の空気はもう何年も異常な張りつめ方をしていたそうです。
生活費の細目から外出時間まで、彼の機嫌ひとつで全てが決まる。買い物のレシートを並べさせては難癖をつけ、実家に電話する時間さえ細かく決められていたといいます。
お嬢様だった頃の叔母を知る親族ほど、その変わり果てた様子に背筋を冷たくしました。
あの夜の薔薇の花束が、よみがえるたびにぞっとします。豪華な縁談の裏で何が始まっていたのか、誰一人として見抜けなかった事実が、今も親族の集まりで重い沈黙を呼ぶのです。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
ほかの小説も読む
CHARACTERS
登場人物から探す
THEME
テーマ・シチュエーションから探す
ENDING
結末から探す
最も人気の短編小説
もっと見る >スカッとする短編小説
もっと見る >モヤモヤ短編小説
もっと見る >ゾッとする短編小説
もっと見る >LINEの短編小説
もっと見る >実体験をもとにした短編小説
もっと見る >恋愛トラブル
もっと見る >ハラスメント
もっと見る >金銭トラブル
もっと見る >浮気・不倫
もっと見る >迷惑
もっと見る >仕事のトラブル
もっと見る >非常識
もっと見る >LINE誤爆
もっと見る >思わず気持ちが晴れた「スカッと」
思い出しても背筋が凍る「ゾッと」
その感情を、物語にしませんか。
GLAMでは、あなたのリアルな体験エピソードを
お待ちしています。

GLAM Lifestyle Editorial
編集部
日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
Feature
特集記事

