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「不良品でしょう。着る前に気づいたのよ」毎回返品を要求する客。だが、店員が突きつけた現実に思わず絶句

開店直後に鳴った電話
店の電話が鳴ったのは、シャッターを上げて十分ほど経ったころでした。
「先週買ったワンピース、返品したいの」
アパレルの販売員をしていると、返品の連絡自体は珍しくありません。
「かしこまりました。ご来店の日時を伺えますか」
「今日の夕方に行くわ」
受話器を置いてから、指が止まりました。よく似た電話を、先週も受けた覚えがあったのです。
控えを遡ると、同じ名字がいくつも並んでいました。ありふれた名字で、対応したスタッフも毎回ちがいます。
誰も気づかないまま、返品だけが積み上がっていたのでした。
夕方、その女性客が来店しました。四十代くらいの、身なりの整った方です。
「こちらのお店でのお買い上げは、何度目でいらっしゃいますか」
「5回目だけど、返品したいのよ」
袖口に走った細い線
畳まれたワンピースを広げ、値札とタグを一つずつ確認していきます。
「少しお時間をいただきます」
袖口の内側に、細い線が走っていました。ほつれではありません。刃物を入れたような、まっすぐな切れ目です。
「不良品でしょう。着る前に気づいたのよ」
言い切れる根拠は、こちらにありませんでした。どこかに引っかけた可能性も残ります。
「ご不便をおかけしました」
形だけの謝罪をして、その日は返品を受けました。
ただ、バックヤードに戻ってから、チーフに一部始終を伝えたのです。
「前の分、まだ処分してない?」
「保管してあります」
「じゃあ、出しておこうか」
カウンターに並んだ2枚
三週間後、また同じ声で電話がかかってきました。
来店したその方の前に立ったのは、チーフでした。
「お預かりします」
チーフは持ち込まれた一枚を広げてカウンターに置き、それから棚の下から前回の返品分を出して、隣に並べました。
2枚のキズは、袖口の内側の同じ位置にありました。
「同じ場所ですね」
チーフはそれだけ言って、女性客の顔を見ます。責める調子はまったくありません。
「……たまたま、でしょう」
「同じ商品の同じ箇所となりますと、メーカーに確認を出すことになります」
女性客の口が、開いたまま止まりました。
「そんな、大げさな」
「こちらはお返しできかねます。お品はお持ち帰りください」
レジ待ちのお客様が、並んだ2枚に目をやっています。
女性客は服をつかんで紙袋に押し込み、伝票も受け取らずに出ていきました。
「言い切らなくていいのよ。事実を並べれば足りるから」
チーフはカウンターを拭きながら、そう言いました。
それきり、あの方が店に現れることはありません。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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