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「入れた覚えないんだけど」鞄に入れた画材が忽然と消えた。数ヶ月後、思わぬところから見つかった瞬間

「入れた覚えないんだけど」鞄に入れた画材が忽然と消えた。数ヶ月後、思わぬところから見つかった瞬間
知り合いから譲り受けた画材を鞄の内ポケットへ
あれは数年前の春先のことだった。長く絵を描いていた知り合いが引っ越すからと、使い込んだ画材一式を私に譲ってくれた。
譲られた中で一番気に入っていたのが、銀色のキャップが付いた一本の筆ペンと、小さなパレットを兼ねた携帯用の絵具セットだ。
ふとした時間に使いたかったので、私はそれを通勤用の鞄の内ポケットにまとめて入れて持ち歩くようになった。
鞄を変えた日も真っ先にそこへ移していたし、内ポケットには財布も鍵も入れない決まりにしていたので、画材は常に同じ位置にあったはずだった。
鞄をひっくり返しても出てこなかった数ヶ月
ある日の昼休み、ふと描き留めたい風景があって鞄の内ポケットに手を入れた。指先に当たるはずの硬い感触がない。
慌ててテーブルに鞄の中身を全部出した。財布、ハンカチ、手帳、ペン、メイクポーチ、何もかも揃っていたのに、銀色のキャップだけがどこにもなかった。
家に帰ってからもう一度、リビングの床にビニールシートを敷いて鞄を逆さにし、内ポケットを指でなぞって縫い目まで確認した。
それでも出てこない。会社のロッカー、コートのポケット、引き出しの中も探したが、まるで最初から存在しなかったかのように画材だけが行方をくらませていた。
休日には鞄を縫い目ごとに点検し、底の革と裏地の隙間に滑り込んでいないかと細い指を差し込んで探った。
スーツのジャケットも一着ずつ裏返し、机の引き出しは奥まで引き抜いて中身を全部出した。
それでも見つからない。譲ってくれた知り合いに合わせる顔がないと、数ヶ月の間、ふとした瞬間に胸の奥が重くなる日が続いた。
別の探し物をしていた朝、服の隙間から滑り落ちた銀色
季節が二つほど巡ったある朝のことだ。今度はクローゼットの奥に仕舞った冬物のストールを探していた。
ハンガーごと何枚かのコートをまとめて持ち上げた瞬間、コツン、と床の上で硬い音がした。
視線を落とすと、足元に銀色のキャップが転がっている。あの画材だった。コートと厚手のニットの間に、ピタリと挟まるようにして収まっていたらしい。
「入れた覚えないんだけど」
鞄から出した覚えも、服の間に入れた覚えも、一切ない。指先に伝わる金属の冷たさが、長い時間そこにあったことだけを物語っていた。
夫にも見せたが、夫も首をかしげるだけだった。クローゼットを片付けるのはいつも私で、夫はほとんど触らない場所だ。
思い当たる節を全部洗い直しても、どうしてあそこにあったのかはどうしても辿り着けなかった。あの画材がどうやって服の隙間に潜り込んだのか、数年経った今も私のなかでは答えが出ていない。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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