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「母さんの白髪も染めてあげられるね」夫の実家で義母との同居が決まった。同居初日の夜、夫の一言に背筋が凍ったワケ

ようやく終わった、と思った夜
事情があって、一時的に夫の実家に同居することになった時期がある。
荷物の搬入から始まり、義父母へのあいさつ、使う部屋の確認、細かな片付けと、慣れない環境でやることが続いた。
引っ越し自体は大した量ではなかったが、知らない家で動き続けるのは思った以上に気力を削る。
夕方を過ぎた頃には体も頭も使い果たしていた。
やっと落ち着ける、とベッドに入る準備をしていたそのとき、夫が口を開いた。
「結婚したんだから、俺の親の手伝いしてね」
同居初日の夜に、当たり前のような口調で言われた。
続けて、思いついたように付け加えた。
「母さんの白髪も染めてあげられるね」声のトーンは軽かった。
まるで「いい話が思い浮かんだ」とでも言いたげな顔で、こちらを見ていた。
一瞬、意味を飲み込めなかった。
義母が白髪染めに困っているという話は聞いていなかったし、私がそれをする流れになった経緯もない。
親孝行の道具にされた感覚
もし「悪いんだけど、できそうだったら頼めるかな」という言い方だったら、反射的に「いいよ」と答えていたかもしれない。
義母との関係が悪かったわけではないし、困っているなら手を貸したいとも思っていた。
でも、あのときの言い方は違った。
「してあげられるね」という言葉の裏には、「するのが当然」という前提が透けていた。
相談でも依頼でもなく、既定の事実として話していた。私が喜んでやる側に回ることを、最初から疑っていない口ぶりだった。
お前の親孝行のために、当たり前のように私を使おうとするな。
胸の中でそう思った。声には出せなかった。
白髪染めの話だけを取り出せば些細なことに見えるかもしれない。
でも問題はそこではなかった。私が何をしたいか、何ができる状態なのかを一切考慮せず、自分の都合の中に組み込まれていることが気持ち悪かった。
そのとき初めて、はっきり気づいた。
この人にとって私は、自分の生活を整えるための人間であって、自分の意志を持つ別の人間ではないのかもしれないと。
何も言えなかった。ただ「そうだね」とも言わず、返事をうやむやにして布団をかぶった。暗い天井を見ながら、しばらく眠れなかった。
引っ越しの疲れより、あの一言の重さの方が体に残っていた。
翌朝、義母と顔を合わせたとき、あの一言が頭をよぎった。義母は何も知らない。白髪染めを望んでいるかどうかさえわからない。全部が夫の脳内で勝手に決まっていた話だった。それが一番、不思議で、ゾッとするところだった。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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