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「期待している」と言われてきたが、8年間昇給がなかった職場。だが、半年前に退職した同期の言葉で私も退職を決意した

頑張っている人が報われない会社だった
40代になった今だから言える話だ。
30代のほとんどを、私はある会社で過ごした。
入社したときは「ここで頑張れば認められる」と信じていた。
業務には真剣に取り組んでいたし、周囲から難しいと言われる案件でも逃げずに引き受けた。
でも8年を経ても昇給は一度もなかった。
それどころか、いつの間にか「あいつに任せれば断らない」というポジションに収まっていた。
困るのは、自分だけではなかったことだ。
頑張っている同期も、入社したばかりの後輩も、ひとり、またひとりと辞めていった。
毎月のように送別会があり、そのたびに残った人間だけで仕事を割り振り直す。誰かが抜けた穴を埋めるのが当たり前になっていた。
(なぜ頑張っている人が報われないんだろう)
疑問は何度も頭をよぎったが、答えを求める気力も少しずつすり減っていった。
「ここでしか通用しない人間になったら困る」という恐怖が足を引き止め、年月だけが積み重なっていった。
上司は口では必ずこう言う。
「期待している」
だが昇給の話は毎年「来期こそ検討する」で終わった。
面倒な仕事を押しつけてくるときだけ声がかかり、評価の場では名前が出ない。その繰り返しが8年続いた。
退職届を出した日の夜に気がついたこと
転機は同期の一人から届いた連絡だった。
半年前に退職した彼が、転職先でチームリーダーになったという。
給料も上がり、仕事が楽しいと言っていた。
その夜、ふと思った。我慢し続けることを「頑張り」だと信じていたのは、自分だけではないか。
退職届を書いたのは、その翌週のことだった。
上司は「急にどうした」と言ったが、慰留される気はしなかった。
何か大きな理由があったわけではない。
ただ、もう十分だと思った。
退職した日の夕方、近所のスーパーで缶ビールを買った。
家に帰ってソファに座り、一口飲んだ瞬間、
「あ、うまい」
声に出ていた。以前飲んでいたビールと同じ銘柄だったはずなのに、まるで別物のようだった。
重くなっていた肩が、少しだけ下がった気がした。
8年間、我慢することを頑張ることだと思い込んでいた。でも本当に必要だったのは、報われない場所から出る決断だったのだと、あのビールを飲んで初めてわかった。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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