Share
「深夜1時のバイクの音で眠れないの」顔役と呼ばれた女性との世間話。後日、私がクレーマーに仕立て上げられていた

顔役のひと声から始まった
近所で「顔役」と呼ばれている、世話好きな女性がいる。ある日、道端で会うなり、その人は私に話しかけてきた。
「深夜1時のバイクの音で眠れないの」
言われて、私にもなんとなく思い当たった。
少し前に向かいへ越してきた若い夫婦が、旧車のバイクに乗っている。確かに、あのエンジン音はよく響く。
とはいえ、私自身は窓を閉めれば気にならない程度だった。だが、真っ向から否定して角が立つのも避けたい。私はあたりさわりのないよう、こう返した。
「気になる人は、眠れないかもしれませんね」
それだけのつもりだった。ただの相槌、世間話のひとことだ。
まさかこの一言が、思わぬ方向へ転がっていくとは、このとき考えもしなかった。
私の一言だけが伝わっていた
数日後、若夫婦の夫のほうが、妙によそよそしい態度で私に会釈してきた。
以前は気さくに立ち話をする間柄だったのに、明らかに壁を感じる。
不思議に思っていると、別の近所の人が教えてくれた。あの顔役の女性が町内会長のところへ行き、「バイクの騒音で眠れない人がいる。越してきた若夫婦に注意してほしい」と頼んだというのだ。
しかも、その「眠れない人」というのが、いつのまにか私になっていた。
私が苦情を申し立てた、という話になって若夫婦の耳に届いていたのである。
相槌を打っただけの私の一言が、伝言を重ねるうちに「苦情」へとすり替わっていた。
悪気があったわけではないのだろうが、世話好きな人ほど、聞いた話を自分なりにまとめて伝えてしまうものらしい。
放っておけば、あらぬ陰口を叩いた人間として、私はご近所に居づらくなってしまう。それだけは、どうしても避けたかった。
私は、若夫婦の家を訪ねることにした。玄関先で、正直に打ち明ける。自分は苦情など言っていないこと、世間話の相槌がねじれて伝わったらしいこと。
夫は最初こそ身構えていたが、やがて表情をゆるめた。
「そうだったんですか。正直、いきなり注意が来て、戸惑っていたんです」
彼はそう言って、深夜の走行は控えるようにすると、自分から申し出てくれた。
私は、そこまで求めているわけではないと伝えたうえで、こちらこそ紛らわしい返事をしてしまったと、行き違いを詫びた。
後日、あの顔役の女性にも、角の立たないよう事実だけをやんわりと伝えておいた。誤解が解けてみれば、若夫婦とは以前よりも打ち解けて話せるようになった。
ひとつ間違えれば失っていた縁が、まっすぐ向き合ったことで、かえって深まったのだった。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、50代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
ほかの小説も読む
CHARACTERS
登場人物から探す
THEME
テーマ・シチュエーションから探す
ENDING
結末から探す
最も人気の短編小説
もっと見る >スカッとする短編小説
もっと見る >モヤモヤ短編小説
もっと見る >ゾッとする短編小説
もっと見る >LINEの短編小説
もっと見る >実体験をもとにした短編小説
もっと見る >恋愛トラブル
もっと見る >ハラスメント
もっと見る >金銭トラブル
もっと見る >浮気・不倫
もっと見る >迷惑
もっと見る >仕事のトラブル
もっと見る >非常識
もっと見る >LINE誤爆
もっと見る >思わず気持ちが晴れた「スカッと」
思い出しても背筋が凍る「ゾッと」
その感情を、物語にしませんか。
GLAMでは、あなたのリアルな体験エピソードを
お待ちしています。

GLAM Lifestyle Editorial
編集部
日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
Feature
特集記事


