Share
「不器用だから座ってて」冷たい言葉をぶつける義母。だが、夫の優しい言葉に救われた瞬間

「不器用だから座ってて」冷たい言葉をぶつける義母。だが、夫の優しい言葉に救われた瞬間
台所から追い出された夜
結婚して一年目、初めて夫の実家に泊まりに行った日のことだ。
少しでも良い顔をされたくて、私は夕食の支度を手伝おうと台所に立った。
ところが、包丁に手を伸ばす前に、義母が笑いながら私の手をやんわり押しとどめた。
「不器用だから座ってて」
冗談だと思って、私も一度は笑った。けれど、義母の目は笑っていなかった。
「いいから、いいから。慣れない人に立たれると、かえって危ないのよ」
そう言われて、私は文字どおり客間のソファへ追いやられてしまった。
手持ち無沙汰のまま座っていると、台所からは義母と夫の楽しげな声が聞こえてくる。私だけが、その輪の外にぽつんと置き去りにされていた。
夫の皿にだけ盛られた料理
食卓に着いても、居心地の悪さは消えなかった。
「これ、あなたの好物でしょう。たくさん食べなさい」
義母は夫にそう声をかけては、煮物も焼き魚も、次々と夫の皿に取り分けていく。こんもりと山になっていく夫の皿を、私はただ眺めていた。
けれど、私の皿はいつまでも空のままだった。一度も、声はかからない。
「……いただきます」
自分で小さく取り分けながら、私は笑顔を作るのに精一杯だった。
極めつけは、食後の片付けのときだった。皿を下げる私の背中に向かって、義母が夫にこう言ったのだ。
「あなたの奥さん、家事慣れてないみたいね。大丈夫?」
夫が苦笑いで受け流したのが見えて、私はますますいたたまれなくなった。その場では何も言えず、帰りの車の中で、こらえていた涙がこぼれた。
夫が引いた一線
ハンドルを握る夫に、私は思いきって本音をぶつけた。
「不器用だから座ってて、って……私、そんなにダメだったかな」
夫はしばらく黙ってから、はっきりと言った。
「言い方がきついよ」
「母さんは昔からああいうところがある。でも、初めて来た君にあの態度はない。俺から、ちゃんと話すよ」
後日、夫は義母に、私がどれだけ気にしていたかを、穏やかに、けれどはっきりと伝えてくれたそうだ。
次に顔を合わせたとき、義母にはいつもの勢いがなかった。
「この前は……ちょっと、言いすぎたかしらね」
目を合わせないまま、義母はぽつりとそうこぼした。何か続けようとして、やめて、気まずそうに視線をそらす。あんなに強気だった人が、言葉を選びあぐねていた。
それからは、無理に距離を縮めようとはしていない。会うのは行事のときだけ、最低限の付き合いにした。
不思議と、そのほうがずっと気が楽だった。夫が私の側に立ってくれた。そのことが分かっただけで、義実家はもう、身構える場所ではなくなっていた。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
ほかの小説も読む
CHARACTERS
登場人物から探す
THEME
テーマ・シチュエーションから探す
ENDING
結末から探す
最も人気の短編小説
もっと見る >スカッとする短編小説
もっと見る >モヤモヤ短編小説
もっと見る >ゾッとする短編小説
もっと見る >LINEの短編小説
もっと見る >実体験をもとにした短編小説
もっと見る >恋愛トラブル
もっと見る >ハラスメント
もっと見る >金銭トラブル
もっと見る >浮気・不倫
もっと見る >迷惑
もっと見る >仕事のトラブル
もっと見る >非常識
もっと見る >LINE誤爆
もっと見る >思わず気持ちが晴れた「スカッと」
思い出しても背筋が凍る「ゾッと」
その感情を、物語にしませんか。
GLAMでは、あなたのリアルな体験エピソードを
お待ちしています。

GLAM Lifestyle Editorial
編集部
日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
Feature
特集記事


