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「ちょっと大事な用事ができた」私の誕生日をドタキャンした彼。だが、説明しない彼のもとに向かった結果
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誕生日の夜
30代の頃の話です。
私の誕生日の夕方、待ち合わせの1時間前に彼からメッセージが届いた。
「ちょっと大事な用事ができた」
予約したレストランの時間が迫っていた。
理由を聞いても「説明しにくい」と繰り返すばかり。
嫌な予感がして、場所だけ教えてほしいと押すと、渋々住所を送ってきた。
自宅から少し離れた雑居ビルの一室だった。
心配で居ても立っても居られず、タクシーで向かった。
エレベーターを降りると、廊下の突き当たりから彼の声が聞こえてくる。
ドア越しに耳を澄ますと、知らない男性が熱心に何かを説明しているようだった。
ノックして入ると、彼は折りたたみ椅子に座り、スーツ姿の男性と向かい合っていた。
テーブルには分厚い書類と、捺印欄に矢印の付いた付箋が並んでいた。
「契約だけはやめて」
状況が飲み込めないまま彼の隣に座った。
男性が語る内容は、聞けば聞くほど不審だった。元手ゼロで大きなリターンが得られる、今夜決めれば特別枠に入れる。甘い言葉が続く。
私は彼の袖を引いて小声で言った。
「契約だけはやめて!」
「大丈夫だよ、ちゃんと考えてる」と彼は笑顔で返した。
私がもう一度「お願いだからやめて」と繰り返しても、彼は男性の話に引き戻されていく。
専門の窓口に相談してからにしようと提案しても「時間がない」と聞き流された。
結局、彼はその場でハンコを押した。
私の制止を何度も振り切った末に。
帰り道、彼は「大丈夫、絶対に戻ってくるから」と繰り返した。その横顔を見ながら、私の中で何かが静かに決まった。
伝えた言葉
自宅の近くまで戻ったとき、私は立ち止まった。
「絶対に怪しいから、一人で相談窓口へ行って」
彼の目が丸くなった。
「え、何で?」と声が上ずる。
でも私には、もう引き留める気持ちがなかった。
再三の制止を笑顔で無視して、見知らぬ業者の話を信じ切った人を、これ以上心配し続けることはできない。
そう思ったら、胸の中がすっと静かになった。
「今日で終わりにします」と告げて、私は先に歩き出した。
後ろから名前を呼ぶ声が聞こえたが、振り返らなかった。
人混みの中に、その声はすぐに溶けていった。
3度頼んだ。
袖を引いて、声を低くして、最後はお願いだからと頭まで下げた。
それでも彼の手は止まらなかった。あの笑顔の意味を、帰り道でようやく理解した。
私の言葉は、はじめから届いていなかったのだ。
翌朝、専門の窓口へ相談に行ったと彼からメッセージが届いた。読んだが、返信はしなかった。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、50代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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