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「公園のほうまで、あの音が届くんです」響く近所の子供の打球音。だが、回覧板を持ってきた人の何気ない一言で状況が一変

「公園のほうまで、あの音が届くんです」響く近所の子供の打球音。だが、回覧板を持ってきた人の何気ない一言で状況が一変

休日になると、庭から金属音が聞こえてきた

閑静な住宅街に越してきたとき、いちばんうれしかったのは静かなことだった。休みの日の朝、窓際の椅子で本を読む。そんな時間を楽しみにしていた。

ところが、近所の一軒が庭にネットを張ってから、休日の過ごし方が少し変わった。

その家の子どもが庭で野球の練習を始めたのだ。金属バットにボールが当たるたび、「カン」という高い音が住宅街に響く。

一度や二度なら気にならない。それでも何度も続くと、開いていた本の行を見失うことが増えていった。

「今日は、いつまでかな」

夫も音がするたびに窓の外を見るようになった。朝から続く日もあれば、昼過ぎから始まる日もある。

いつ聞こえてくるか分からず、家にいても落ち着かないことのほうが、だんだんこたえるようになった。

何度か直接話そうかと思った。しかし、子どもが一生懸命練習しているだけだと思うと、なかなか言い出せなかった。

「まあ、うちが窓を閉めればいいしね」

そう言って、結局こちらが我慢する。そんな状態が数年続いていた。

回覧板を持ってきた人が口にしたこと

ある休日、その日も朝から金属音が響いていた。

インターホンが鳴ったので玄関へ出ると、同じ並びに住む年配の女性が回覧板を持って立っていた。

私が受け取っていると、女性が音のする方向を見ながら何気なく言った。

「そういえば、朝から野球やってますよね」

そして、続けてこう言った。

「公園のほうまで、あの音が届くんです」

困っていると訴えるような口調ではなかった。ただ、散歩の途中で気づいたことを話しているような穏やかな声だった。

ちょうどそのとき、その家の人が道の向こうから歩いてきた。

女性の言葉が聞こえたのか、その人は少し足を止めた。

「そんなに遠くまで聞こえてるんですね」

女性は特に気にした様子もなく、「うちのあたりでも聞こえますよ」と答えた。

私は何も言わなかった。こちらから苦情を伝えたわけでも、女性が注意したわけでもない。ただ、思っていた以上に音が遠くまで届いていたことを、その人も初めて知ったようだった。

次の休日、庭は静かになっていた

翌週の休日、窓を開けてもいつもの音が聞こえてこなかった。

外を見ると、庭に張られていたネットもたたまれていた。

数日後、ごみ出しの帰りにその家の人とすれ違った。

「あっちのほうが広いので、練習する場所を変えたんです」

それだけ言って、いつものように軽く会釈をして通り過ぎていった。

苦情を言わなくても、何気ない一言で気づくことがあるのかもしれない。

その休日、私は久しぶりに窓を開けたまま椅子に座った。膝の上で本を開いても、もう途中で行を見失うことはなかった。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。

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