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「え、誰だろう」引越し初日、玄関前に並んでいた近隣住民。差し出された紙袋の中身とは

段ボールの山で鳴ったインターホン
新しい家に引っ越した日の夕方でした。
廊下にも居間にも段ボールが積み上がり、腰を下ろす場所を探すのも一苦労です。
朝から荷物を運び続けていましたが、食器も調理器具も、まだ箱の中に入ったままでした。
冷蔵庫は空っぽ。流し台には、昼に食べたコンビニのおにぎりの袋が置いてあります。
「食器の箱は、明日でいいよね」

夫がカッターを床に置いたところで、インターホンが鳴りました。
私たちがこの家に来てから、まだ半日しかたっていません。
引っ越し業者はすでに帰っています。荷物が届く予定もありませんでした。
「え、誰だろう」
夫と顔を見合わせます。
慣れない土地での生活に、私は少し緊張していました。
近所にはどんな人が住んでいるのか。うまく付き合っていけるのか。
不安を抱えたまま、玄関へ向かいました。
扉の外に並んでいた3人
恐る恐る扉を開けると、玄関の前に3人の女性が立っていました。
右隣と左隣、そして道を挟んだ向かいの家に住んでいる方たちでした。
それぞれの手には、小さな紙袋があります。
「引っ越し、お疲れさま。これからよろしくね」
右隣の方が、笑顔で紙袋を差し出しました。
「こちらからご挨拶に伺わないといけなかったのに、すみません」

私が慌てて頭を下げると、3人はそろって首を横に振りました。
「引っ越した日は、どの箱に何が入っているかも分からないでしょう」
「うちなんて、お茶碗が見つからなくて、3日間ずっと紙皿だったのよ」
向かいの方が笑うと、隣の方たちもうなずきました。
紙袋の中には、個包装のクッキーとティーバッグ、紙コップが入っていました。
「今夜くらいは、片づけを休んでお茶にしたらいいから」
その言葉を聞いた瞬間、朝から張り詰めていた気持ちが、ふっとほどけました。
「うちには小学生の子どもが2人いるので、朝は少し騒がしくなるかもしれません」
私が伝えると、左隣の方は笑って答えました。
「子どもの声が聞こえるくらいのほうが、にぎやかでいいわよ」
「分からないことがあったら、遠慮しないで聞いてね」
ほんの数分の立ち話でしたが、知らない町に来たという心細さが、少しだけ消えていました。
間違えたごみ捨て場
翌週の朝、燃えるごみの袋を持って家を出たときのことです。
近くにあった集積所へ向かおうとすると、後ろから声をかけられました。
「そっちじゃないわよ」
振り返ると、右隣の方がごみ袋を持って立っていました。
「この通りの集積所は、一本先の角を曲がったところなの」
「すみません。危うく間違えるところでした」
「大丈夫。私も引っ越してきたばかりのころ、同じ場所に出しちゃったから」
右隣の方は笑いながら、集積所まで一緒に歩いてくれました。
道中で、缶や瓶を出す曜日や、回覧板が回ってくる順番、自治会の集まりについても教えてくれました。

「野菜を買うなら、駅前より川沿いのお店のほうが安いわよ」
「そうなんですか」
「木曜の午後がおすすめ。これは近所の人だけの秘密ね」
そんな話をしながら歩いていると、数日前まで知らなかった道が、少しずつ自分の生活する場所に変わっていくように感じました。
半年後に鳴ったインターホン
それから半年ほどたったころ、斜め向かいの空き家に新しい家族が引っ越してきました。
夕方になっても、家の前には段ボールを積んだトラックが停まっています。
窓の向こうでは、夫婦らしき二人が慌ただしく荷物を運んでいました。
その様子を見ていると、引っ越してきた日のことを思い出しました。
私は棚から個包装のお菓子を取り出し、ティーバッグと紙コップを小さな袋に入れました。
「ちょっと挨拶に行ってくるね」
夫に声をかけ、玄関を出ます。
新しい家のインターホンを押すと、少し間を置いて、緊張した表情の女性が扉を開けました。
半年前の私と、きっと同じ表情でした。
「引っ越し、お疲れさまです。これからよろしくお願いします」

そう言って紙袋を差し出すと、女性の表情が少しだけやわらぎました。
あの日、玄関先で受け取ったのは、お菓子や紙コップだけではありません。
知らない土地で暮らし始める私たちを、そっと迎え入れてくれる気持ちだったのだと思います。
今度は私が、その気持ちを次の人へ渡す番になりました。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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