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「手際が悪い、早くしろよ新人」レジで縮こまった私。だが、後ろに並んでいた客の一言に救われた瞬間

「手際が悪い、早くしろよ新人」レジで縮こまった私。だが、後ろに並んでいた客の一言に救われた瞬間
雨の夜、レジは私ひとり
学生の頃、駅前のコンビニで夜のシフトに入っていました。レジに立ち始めて、まだ三週目です。
その日は夕方から雨で、傘立てはすぐに一杯になりました。
先輩は品出しで奥に入っていて、レジには私ひとりだけです。
会計の途中、電子マネーの残高が足りないと画面に出ました。
お客様が、もう一枚のカードを財布から探し始めます。
「あの、少々お待ちください」
やり直そうとしたのに、前の画面への戻り方が分かりません。
指が止まっているあいだに、後ろの列は四人、五人と伸びていきました。
そのとき、列の中ほどから声が飛んできたのです。
「手際が悪い、早くしろよ新人」
店内の音が、すっと遠くなりました。
列の後ろにいた女性
「すみません、すみません」
謝ることしかできず、指先が震えて画面を押し間違えます。
「だから遅いんだよ。待たせてる自覚あんのか」
肩が勝手に縮こまって、顔を上げられなくなりました。
そのとき、レジの正面ではなく、少し離れた場所から声がしたのです。
「この子も一生懸命やってるでしょう」
年配の女性でした。声を張るでもない、普通の話し方です。
「大声で威圧するのは、やめてあげて」
男性が振り返りました。
何か言おうと口を開いて、そのまま閉じます。
まわりのお客様が、二人、三人とそちらを見ていました。
買い物かごを提げた男性が、小さく首を横に振っています。
「……急いでるだけだろ」
そう言い捨てると、男性は持っていた商品を雑誌の棚に置いて、店を出ていきました。
自動ドアが閉まる音だけが、やけに大きく聞こえました。
信号の手前で追いついた
止まっていた列が、また動き出しました。
女性は何事もなかったように、かごを台に置きます。
「お会計、お願いね」
「ありがとうございます。あの、さっきは……」
言いかけたところで、後ろのお客様がもう商品を差し出していました。
お礼を言えないまま、女性は自動ドアの向こうへ出ていきます。
先輩が奥から戻ってきたのは、それから数分後でした。
「すみません、少しだけ外に出ます」
言うより先に、私は駆け出していました。
女性は横断歩道の手前で、信号を待っていました。
「あの、さっきはありがとうございました」
頭を下げると、女性は驚いた顔をして、それから小さく笑いました。
「言われっぱなしは、よくないからね」
信号が青になり、女性は振り返らずに歩いていきます。店に戻ると、雨は小降りになっていました。
あの夜から、どれだけ急かされても私は下を向かなくなりました。
見ず知らずの新人のために声を出せる人が、あの列に並んでいたからです。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、20代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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