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「狭いんだ、しょうがねえ」シートを倒してお茶をこぼした乗客。だが、車掌の行動に救われた瞬間

静岡を過ぎたあたりで
お盆の時期の新幹線でのことです。
私は座席のテーブルにノートパソコンを広げ、資料を作っていました。
名古屋に着くまでに仕上げて、取引先へ送らなければなりません。
静岡を過ぎたころ、突然、目の前の背もたれが大きく動きました。
前の席の男性が、勢いよくシートを倒したのです。
パソコンの画面が背もたれに押されそうになり、私は慌てて手前へ引き寄せました。
その拍子に、キャップを開けたまま置いていたお茶のボトルが倒れます。
お茶はテーブルを伝い、私のスカートにまでこぼれてしまいました。
「あっ……」
思わず声が出ました。
しかし、前の席の男性は振り返りません。
私がパソコンを膝の上へ移していると、男性は前を向いたまま言いました。
「狭いんだから、しょうがないだろ」
さらに、小さな舌打ちまで聞こえてきました。
隣や通路を挟んだ席の人たちも、一度こちらを見ましたが、すぐに視線を戻します。
私はハンカチでスカートを押さえました。
濡れたテーブルの上には、茶色い水滴が広がったままです。
拭くものを持ってきた車掌
しばらくして、通路を歩いてきた車掌が、濡れたテーブルに気づいて足を止めました。
「お客様、どうかなさいましたか」
私は周囲に聞こえないよう、小さな声で事情を説明しました。
車掌はうなずくと、いったんその場を離れます。
少しして、拭くための紙タオルを持って戻ってきました。
「こちらをお使いください」
「ありがとうございます」
私がテーブルを拭いている間、車掌はパソコンと、深く倒された前の背もたれを見比べていました。
そして前の席の横に立ち、落ち着いた声で男性に話しかけたのです。
「恐れ入ります。後ろのお客様のお荷物に当たっておりますので、シートを少しお戻しいただけますでしょうか」
男性は、不満そうに車掌を見上げました。
「シートを倒しちゃいけないのか」
「お倒しいただくこと自体は問題ございません。ただ、後ろのお客様がパソコンをお使いですので、少しだけご配慮をお願いいたします」
車掌は声を荒らげることなく、同じ調子で説明しました。
男性は何も言い返しません。
しばらくすると、背もたれに手をかけ、シートを少しだけ起こしました。
残りの時間
前の背もたれとの間に余裕ができ、私は再びパソコンをテーブルへ置けるようになりました。
「ご協力ありがとうございます」
車掌は男性にそう声をかけました。
続けて私にも、
「お召し物は大丈夫でしょうか」
と確認してくれました。
「はい。ありがとうございました」
車掌は軽く頭を下げ、次の車両へ歩いていきました。
男性を強く責めることも、私の味方をするような言葉を口にすることもありませんでした。
ただ、起きている問題を確認し、双方が納得できるよう静かに対応してくれたのです。
通路を挟んだ席の女性が、私と目が合うと、心配そうに小さく会釈をしました。
私は同じように頭を下げ、パソコンへ向き直ります。
スカートにはまだ少し染みが残っていましたが、作業を続けられるだけのスペースは戻っていました。
名古屋に到着する少し前、私は完成した資料を無事に送信しました。
ホームに降りたとき、濡れたスカートよりも、間に合ったことへの安堵のほうが大きかったのを覚えています。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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GLAM Lifestyle Editorial
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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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