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「お兄さんね、結婚したのよ」私以外の家族だけ知っていた兄の結婚。数年後、父の入院で気づいた違和感

「お兄さんね、結婚したのよ」
久しぶりに実家へ帰省した夜、夕食の食卓で母がさらりと言った。
「お兄さんね、結婚したのよ」
箸が止まった。
兄は隣でなにごともなさそうに茶を飲んでいた。父も黙ったまま茶碗を傾けていた。3人がすでに知っていて、私だけが知らなかった。
そういう構図が、食卓の空気からじわりと伝わってきた。
いつ式を挙げたのか、相手はどんな人なのか、そういう話を聞こうとしても母の口調はどこか軽かった。
「近いうちに会わせるから」と言われたが、その約束が果たされることはなかった。
(なぜ私には知らせてくれなかったのだろう)
帰りの電車の中でずっとその疑問が浮かんでは消えた。
思い返せば、家族の大事な話が私の耳に届くのはいつも後回しだった。
兄の進学のことも、父の仕事の変化も、周りが知った後でようやく教えてもらった記憶がある。今回もそういうことなのだと、自分に言い聞かせようとした。
でも、結婚という一生に一度の話を後から事後報告されることの静かな重さは消えなかった。しかもそれを不思議と思っていないのは、父も兄も母も全員同じだった。その一体感が、かえって胸に刺さった。
父が入院した夜、兄から届いた連絡
それから数年が経ち、父が体調を崩して入院することになった。
連絡をくれたのは兄だった。
「父さん入院した、いろいろ手伝ってほしい」と、久しぶりにまとまった長さのメッセージが届いた。
近くに住む私に頼んだほうが動きやすいという判断もあったのだろう。
父のために動いた。入院中に気がまぎれるようにと塗り絵のセットと色鉛筆を送った。
見舞いにも足を運んだし、病院のスタッフとのやりとりも担った。
父のことは心配だったし、父を中心にできることをしたいという気持ちは本物だった。
ただ、兄からのメッセージを読み返すたびに、あの食卓の夜が頭によみがえった。
(結婚を黙っておいて、こういうときだけ声をかけてくる)
そう感じるのは器が小さいのかもしれない。
でも、心の奥で何かが引っかかったままだった。動いている間も、「頼られている」より「都合よく使われている」という感覚が先に来た。
許せたかと問われれば、正直に言えば許せていない。
兄だけの話ではなく、母も当然のように関わっていたし、それはずっと前からそういう家族だったのだと、大人になってから少しずつ腑に落ちてきた。
私だけ扱いが違うという感覚は、きっとあの夜に始まったことではない。答えは今も出ていない。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、50代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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