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「隣の迷惑考えてよ」 電車内で音漏れしている男。だが、男がスマホを落とした瞬間、状況が一変

今日はハズレだ、と思った朝
通勤電車が混み始める時間帯のことだった。
その日は少し遅めに家を出たが、運よく座れた。
かばんをひざの上に置き、目的の駅までもうすぐというところで、隣の席が空いた。
座れた席のすぐ隣に、少し遅れて人が座ってきた。
ヘッドホンをつけたまま、かなり大きな音で音楽を流していた。
隣に座っただけで、ドラムとベースがはっきり聞こえてくる。かなりの音量だ。
しばらくすると、その人がリズムに合わせて足で床をドン、ドンと叩き始めた。
シートが微かに振動するくらいの強さで、一定のテンポを刻んでいる。
周囲の乗客が、ちらちらとこちらを見ている気もする。
自分が出しているわけではないのに、なぜか居たたまれない。
(注意しようか)
そう思いかけて、やめた。朝から波風を立てるのも気が重い。今日はハズレの席を選んでしまったと、窓の外に目を向けた。
イライラが積み重なっていくなかで
その後も音漏れは続いた。曲が変わるたびに音量が上がったり下がったりするが、隣の人が気にするそぶりはない。
足踏みも続いている。
ドン、ドン。シートが微妙に振動する。
(隣の迷惑考えてよ)
(せめて、もう少し音を絞ってくれれば)
でも声には出せなかった。
どんな反応が返ってくるかわからないし、朝の時間帯に余計なトラブルは避けたい。
こちらが気を揉んでいるのに、当の本人はまったく意に介していないように見える。ただひたすら、目的の駅が近づくのを待った。
次の駅のアナウンスが流れると、隣の人がようやく立ち上がった。
(もうすぐ終わる)
そう思ったとき、床にパタンと音がした。
「落としましたよ」の一言が、朝を変えた
スマホが足元に滑っていた。
反射的に拾い上げて、立ち上がろうとしていたその人に差し出した。
「落としましたよ」
相手の顔が、一瞬驚いたように固まった。次の瞬間、深く頭を下げた。
「ありがとうございます!」
声はきちんとしていて、お辞儀も丁寧だった。そのまま扉が開いて、降りていった。
残されたのは静寂だった。音漏れも足踏みも、もうない。車内がふっと落ち着いた空気に戻る。
さっきまであんなに気になっていたのが、嘘みたいだ。
窓の外の景色を眺めながら、朝から思いがけず人のためになれた気がして、気分がずいぶん軽くなった。
拾って渡しただけの、ほんの数秒のことだ。でも、あの深々としたお辞儀がまだ目に浮かぶ。イライラしていたことも、どこかへ飛んでいった気がした。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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