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「ついてきてますよね」夜の住宅街で何度も振り返って笑いかける男。立ち止まると彼も足を止めた瞬間

「ついてきてますよね」夜の住宅街で何度も振り返って笑いかける男。立ち止まると彼も足を止めた瞬間
夜の住宅街で、前を歩く男が何度も振り返った
残業で遅くなった夜だった。
人気のない住宅街を、私は足早に歩いていた。
街灯の間隔は広く、その光は頼りなく、足元だけをぼんやり照らしている。
暗がりのなかで自分の足音だけが妙に大きく響いた。
少し前を、スーツ姿の見知らぬ男性が同じ方向へ歩いていた。
仕事帰りなのだろう、とそのときは気にも留めていない。ただ早く帰りたい、とそればかり思っていた。
その男性が、ふいに振り返った。
目が合う。にやりと笑いかけられて、私は思わず視線をそらした。
気のせいだと思いたかった。けれど男性は、何歩か進んではまた振り返り、そのたびに私を見て笑うのだ。
その笑い方が、どうにも普通ではなかった。目だけがまっすぐこちらに向いたままで、笑うたびに背筋が縮んだ。
「ついてきてますよね」
意味が、うまくのみ込めない。
何と返せばいいのかもわからなかった。
距離を取ろうと、私はわざと歩調をゆるめた。少しでも間を空ければ、相手は先へ行くだろうと思ったのだ。
立ち止まると、その人もぴたりと足を止めた
すると、前の男性もぴたりと足を止めた。振り返ったまま、じっとこちらを見つめている。
振り返った顔は、暗がりのなかでも笑っているのがわかった。
私が止まれば、相手も止まる。私が歩けば、また歩き出す。距離は、縮まりも離れもしない。
まるで、私に合わせて距離を測られているようだった。
街灯の光の下で、その笑みだけがはっきりと見えた。
何をされたわけでもない。声を荒げられたわけでもない。それなのに、本能が異常だと告げていた。
この場所にいてはいけない、と全身がざわめいていた。頭のどこかで、危険を知らせる音が鳴り続けている。
私は踵を返し、来た道を全力で引き返した。
明るい大通りが見えるまで、一度も振り返らなかった。
心臓の音と、自分の足音だけが耳の奥で鳴っていた。背後であの人がどうしているのか、確かめる余裕もなかった。
息が上がっても、足を止めることだけはできなかった。ただ、明るい場所へたどり着くことだけを考えていた。
大通りに出て、ようやく息をついた。あの人は今もあの道にいるのだろうか。
何を考えて、あんなふうに笑っていたのだろう。実害はなかった。それでも、あの静かな恐怖は、今も忘れられないままでいる。ふとした夜道で、今もあの笑みがよみがえる。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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