Share
「嫁に出たお前に取り分はない」父の遺産相続で豹変した兄。だが、私の大人の対応で逆転した話
INDEX

四十九日で豹変した兄
父の四十九日を終えた親族の席で、兄が湯呑みを置いて切り出しました。
「話がある。親父の家と土地のことだ」
父は晩年の20年を、私が中心になって支えてきました。仕事帰りに実家へ寄り、通院に付き添い、少しずつ弱っていく父の手を握って、最期は自宅で穏やかに見送りました。兄は遠方を理由に、年に一度顔を出す程度でした。
それなのに、遺産の話になった途端、兄の目の色が変わったのです。
「家も土地も、長男の俺が継ぐ。当然だろう」
「嫁に出たお前に取り分はない」
あまりの言い草に、言葉が出ませんでした。集まった親族も、当たり前のように兄に同調します。
「そうよ、家を継ぐのは長男でしょう」
「あなたはもう他所の人なんだから、口を出さないの」
誰も、父の介護の話には触れませんでした。付き添った病院の待ち時間も、夜中の呼び出しも、知らないふりです。
父と過ごした20年の日々を、たった一言で片づけられた気がしました。ここで感情的に言い返せば、ただの相続争いになる。私は震える手を膝の上でそっと握りました。
弁護士と引いた一線
数日考えて、私は専門家に相談することを決めました。感情ではなく、筋で向き合うためです。次に兄から電話が来たとき、私は静かに告げました。
「弁護士に一任しました」
電話の向こうで、兄が息を呑むのがわかりました。
「弁護士って……お前、身内相手に何のつもりだ」
「父の意思も、介護の記録も、全部残っています。きちんと分けたいだけです」
後日、弁護士を通じて法定通りの分割を正式に提示しました。理不尽な要求はすべて根拠がないと示されると、あれほど強気だった兄は、みるみる青ざめていきました。
「そんな、大事にするつもりじゃ……」
言葉尻がしぼんでいきます。書面を前に、あれこれ口を挟んでいた親族も、一人、また一人と目を伏せて黙り込みました。あんなに賑やかだった部屋が、しんと静まり返ったのです。
ふと、末席にいた叔母が小さくつぶやきました。
「……あの子が、ずっとお父さんを見てたものね」
「大事にしたのは、そちらです」
私は正当な取り分を受け取り、静かに席を立ちました。もう、この人たちと無理に繋がる必要はない。父を看取ったことは、誰に認められなくても私の中に残っています。
「これで、けじめはつきました」
振り返らずに玄関を出ると、外の風が驚くほど軽く感じられました。守るべきものを守れた。その事実だけで、十分でした。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、50代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
ほかの小説も読む
CHARACTERS
登場人物から探す
THEME
テーマ・シチュエーションから探す
ENDING
結末から探す
最も人気の短編小説
もっと見る >スカッとする短編小説
もっと見る >モヤモヤ短編小説
もっと見る >ゾッとする短編小説
もっと見る >LINEの短編小説
もっと見る >実体験をもとにした短編小説
もっと見る >恋愛トラブル
もっと見る >ハラスメント
もっと見る >金銭トラブル
もっと見る >浮気・不倫
もっと見る >迷惑
もっと見る >仕事のトラブル
もっと見る >非常識
もっと見る >LINE誤爆
もっと見る >思わず気持ちが晴れた「スカッと」
思い出しても背筋が凍る「ゾッと」
その感情を、物語にしませんか。
GLAMでは、あなたのリアルな体験エピソードを
お待ちしています。

GLAM Lifestyle Editorial
編集部
日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
Feature
特集記事


