Share
「今の時代、男も育児するのが当たり前だよね」同僚とのBBQで育児を語る夫。だが、妻の一言で空気が一変

トングを握って語り出した夫
その日は夫の会社の同僚家族と河川敷でBBQをすることになっていた。
普段、家事も育児もこちらに丸投げの夫が、なぜか前夜から張り切ってトングや軍手を準備していた。
当日、現地に着くなり夫はエプロンを締め、子どもの皿に肉を取り分け始めた。
手つきだけ見れば、ベテランの父親に見えなくもない。
同僚の奥さんたちが集まってきたタイミングで、夫が得意げに語り始めた。
「うちの育児方針はね、子どもの自主性を尊重する方向で揃えてるんだ。今の時代、男も育児するのが当たり前だよね」
子どもにケチャップ付きのソーセージを切り分けながら、夫はそう繰り返した。
隣の奥さんたちは「素敵なご主人ですね」と相槌を打ち、別のママは「うちも見習わせなきゃ」と笑う。
私は紙皿を握り締めたまま、口角だけを上げ続けた。
普段の家での夫を一日でも見てくれと、心の奥で叫んでいた。
家での実態と現場での演技、その落差を一人だけ知っている立場ほど、消耗するものはなかった。
夫はさらに、保育園の連絡帳のやり取りや週末の公園遊びまで、すべて自分が回しているかのような口ぶりで続けた。
私は無理して笑顔を作り続けた。
笑顔の妻が放った一言で空気が変わる
頃合いを見て、私はわざと明るく、奥さんたち全員に聞こえる声で割り込んだ。
「本当に助かるわ。でも、普段はオムツの前後も逆につけちゃうし、子どもの通う幼稚園の名前すら覚えてないのに、今日のためにたくさん練習してきてくれたのね」
炭がパチンと跳ねる音だけが、しばらく場を支配した。
夫の顔から表情が抜け、トングを持つ手がぴたりと止まる。奥さんたちは目を伏せ、苦笑いが伝染するように広がっていく。
同僚の男性陣は気まずそうに紙コップに口をつけ、視線を河の方へ逃がした。
「えっ、幼稚園の名前って」と、一番年配のママが控えめに尋ねる。
夫は唇を動かしかけて止まり、結局答えない。
私は笑顔のまま「年少さんから通ってるんですけどね」と続け、子どもの頭を撫でた。
場の空気は完全に変わり、自称イクメンの正体はその場の全員に伝わった。
帰り道、夫は車内でずっと黙っていた。翌週から、夫は急にオムツの前後を確認するようになり、幼稚園の名前と先生の名前をスマホのメモに打ち込んでいた。
遅すぎる第一歩だが、人前でだけ語る父親が、ようやく家の中で動き始めた合図ではあった。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
ほかの小説も読む
CHARACTERS
登場人物から探す
THEME
テーマ・シチュエーションから探す
ENDING
結末から探す
最も人気の短編小説
もっと見る >スカッとする短編小説
もっと見る >モヤモヤ短編小説
もっと見る >ゾッとする短編小説
もっと見る >LINEの短編小説
もっと見る >実体験をもとにした短編小説
もっと見る >恋愛トラブル
もっと見る >ハラスメント
もっと見る >金銭トラブル
もっと見る >浮気・不倫
もっと見る >迷惑
もっと見る >仕事のトラブル
もっと見る >非常識
もっと見る >LINE誤爆
もっと見る >思わず気持ちが晴れた「スカッと」
思い出しても背筋が凍る「ゾッと」
その感情を、物語にしませんか。
GLAMでは、あなたのリアルな体験エピソードを
お待ちしています。

GLAM Lifestyle Editorial
編集部
日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
Feature
特集記事

