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「邪魔だよ」改札で肩を強く押して無言で消えた男。だが、電車で見知らぬ人が放った一言で胸が熱くなった

改札で押しのけてきた男
その日は朝からバタバタが続いていた。
職場で立て続けにトラブルが重なり、退社したときにはすでに足が重かった。
早く家に着きたい気持ちと、帰ってもどうせ疲れが残るだろうという気持ちが混ざっていた。
駅の改札を急ぎ足で通ろうとしたとき、後ろから肩を強く押された。
振り返ると、スーツ姿の若い男がスマートフォンから目も離さず、こちらを一瞥する素振りもなくすれ違いざまに低く吐き捨てた。
「邪魔だよ」
そのまま振り向きもせず、人の流れに消えていった。謝罪もなかった。
(謝りもしないのか)
声には出さなかった。出したところで何も変わらないし、疲れているときに余計な言葉を使いたくなかった。
ただ、小さな怒りが胸に残った。こういうことが続くと、社会の中にいることが急にしんどくなる。ホームに出ると電車がちょうど滑り込んできた。
体を押し込むようにして乗り込み、つり革を掴んだ。
見知らぬ人が立ち上がった
車内はそれなりに混んでいた。席はほぼ埋まっていて、立っている人も何人かいた。
疲れた体にはつり革一つが頼りで、揺れるたびに少し体が傾いた。何か考えるでもなく、ただ早く駅に着いてほしいとぼんやり思っていた。
しばらく走ったところで、近くの席に座っていた男性がふと立ち上がった。
50代前後に見える、作業着姿の人だった。
その人が静かにこちらを向いて、一言だけ言った。
「どうぞ」
一瞬、自分に向けられた言葉だと気づかなかった。きょとんとしていると、その人が小さくうなずいて座席のほうに目線を向けた。
席を譲ってくれているのだとやっと分かった。
「ありがとうございます」と小さく返して、その席に座らせてもらった。座った瞬間、体の力がやわらかく抜けた。
ただそれだけのことなのに、目の奥が少しだけ熱くなった。押しのけられた改札からここまで、たった15分も経っていなかった。
同じ夜に出会った二種類の人
その人はつり革を掴んで、特に何も言わずに窓の外を眺めていた。
理由を聞かれたわけでも、お礼を求められたわけでもなかった。ただ疲れているように見えたから席を譲ってくれた、それだけだ。
少し前に改札で肩を押しのけていった男のことを思った。同じ帰り道で、同じ電車で、こんなにも違う場面がある。見知らぬ人に押されて、見知らぬ人に助けられた夜だ。
降りる駅に着いて、小さく頭を下げた。その人はもう窓の外を見ていた。名前も知らない、二度と会わないかもしれない人だけど、その夜の温度だけはしばらく残った。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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