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「30人全員にタオルを贈るつもりだ」と労おうとした社長。だが、同僚から聞かされた真相に拍子抜けした

「全員に贈る」と経営者が言い出した日
私が勤めていた会社の経営者は、普段めったに社員を気にかける人ではなかった。
挨拶を返すのもそっけなく、いつも数字と機嫌だけで動いているような人だ。だから朝礼でその話が出たとき、フロア全体がざわめいた。
「30人全員にタオルを贈るつもりだ」
福利厚生も兼ねて、社員一人ひとりに記念のタオルを配るという。
日頃は経費の話しかしない人の口から出た言葉に、みんな一瞬、耳を疑って言葉を失った。
「やった」「え、マジ」と、あちこちから素直な声が上がった。
私も思わず隣の同僚と顔を見合わせた。
たかがタオル一枚かもしれない。それでも、あの経営者が自分たちのために何かをしてくれる、そのこと自体がめずらしくて、少しだけ胸が温かくなった。
その日は帰り道まで、どんな色だろう、名前は入るのかな、と他愛のない想像で盛り上がった。
社名の刺繍が入っていたら少し気恥ずかしいね、なんて笑い合ったのを覚えている。小さな贈り物への期待が、いつもより職場を明るくしていた。
数か月が過ぎても、何も届かない
ところが、期待していたタオルは一向に配られなかった。
一週間、一か月、いつの間にか季節が変わっても、机の上にも郵便受けにも何一つ届かない。
最初は準備に時間がかかっているのだろうと思っていた。
発注や名入れに手間がかかるのだろう、忙しい時期だから、と自分に言い聞かせていた。けれど数か月が過ぎると、さすがに誰もその話題を口にしなくなった。
あの日の盛り上がりが、まるで最初からなかったことのように、静かに消えていった。
それでも私はどこか引っかかっていて、ある日、何気なく古株の同僚に尋ねてみた。
あのタオルの話、結局どうなったんですか、と。
同僚は少し声をひそめて答えた。経営者が何かで機嫌を損ねて、贈るのをやめてしまったのだと。
しかもその決定は、社員の誰にも知らされないまま、いつの間にか立ち消えになっていたらしい。
私はしばらく返す言葉が見つからなかった。もらえないこと自体は、正直どうでもよかった。ただ、あれだけ全員の前で宣言しておいて、取りやめたことすら誰にも伝えない。その一方的な幕引きに、背筋がひやりとした。
結局、あのタオルがどこへ消えたのか、なぜ立ち消えになったのか、今も誰も知らない。誰かが問いただすこともなく、うやむやのまま時間だけが過ぎた。ただ人の気持ちの移ろいやすさと、上に立つ人の身勝手さだけが、今も静かに胸の底に残っている。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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