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「ゴミ捨て場に監視カメラを付けます」町内会費で住民を見張ろうとした会長。だが、投票結果後の状況に抱えた葛藤

回覧板に書かれていた防犯カメラ案
定年を迎えてからは、町内会の集まりに顔を出すようになった。
長年世話になってきた町だ。掃除当番もゴミ当番も、できる範囲で引き受けるつもりでいた。
ある日、回覧板に差し込まれていた一枚の紙を見て、私は読み返した。
次回の集会でゴミ集積所の運用について話し合う、と書かれていた。
指定日以外の投棄が増えており、対策を協議したいというのが議題だった。
近所の犬の散歩仲間と、駅前の喫茶店で顔を合わせて世間話をした。
「ゴミ出しのマナーくらいで集会開くんかね」と、私は笑って言った。
深く考えずに、紙をしまった。
町内会費で監視カメラを買うという提案
集会の日、公民館の長机に十数人が並んだ。
町内会長と自治会長が並んで座り、開口一番、こちらに向かって言葉を放った。
「ゴミ捨て場に監視カメラを付けます」
町内会費から数十万円を出して、集積所の上に防犯カメラを設置する。
映像で違反者を特定し、自宅に注意に出向く。淡々と読み上げる声に、参加者の間で空気が止まった。
隣の席の主婦が小さく息を呑んだ。何年も顔を合わせてきた住民の顔を、機械で記録に残すという話だった。
私は思わず手を挙げた。
「ご近所さんを撮るのか」
言ってから、自分の声が思いのほか低かったことに気づいた。
会長は紙を見たまま、設置工事は来月からと続けた。
否決後に消えた朝の挨拶
議論は二時間に及び、最後は投票になった。
賛成は半数を割り、提案は否決された。
会長はノートを閉じ、何も言わずに立ち上がった。
自治会長が後に続いて、公民館の戸が乱暴に閉まった。
後日、賛成派と反対派で集会には別々に集まるようになった。長年一緒に祭りの神輿を担いだ顔ぶれが、二つに割れた。
盆踊りの準備の打ち合わせも、両派から別々に声がかかった。
翌週から、朝のゴミ出しで挨拶を返さない家が出てきた。回覧板を素通りで隣に渡す主婦もいた。
ゴミの問題よりも、見張り合う関係に町を作り替えようとした提案そのものが、町を冷やしていた。
そこまでしないと暮らせないのかと考えると、長く住んだ街の景色が急に他人の顔に見えた朝だった。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、60代以上・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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