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「これもらうわね」楽しみにしていたパンを横取りした客。だが、店員が明かした事実で状況が一変

「これもらうわね」楽しみにしていたパンを横取りした客。だが、店員が明かした事実で状況が一変
目当てのパンを横取りされた朝
週末の午前中、近所のパン屋に立ち寄った。
お気に入りはいつも決まっていて、焼きたてのとうもろこしパンだ。
甘い香りにつられて足を運ぶのが、週末の小さな楽しみになっていた。
ショーケースの前に並んで、ようやく自分の番が近づいてきたとき、横からすっと入り込んでくる中年女性がいた。
当然のような顔でトングを手に取り、棚の上に残っていた最後のとうもろこしパンを軽くつまみ上げた。
「これもらうわね」
独り言なのか連れに言ったのか、こちらに視線を向けないまま小さく呟いて、トレーに乗せた。
並んでいた私の存在には気づいていないのか、気づいた上で無視しているのか、その顔からは何も読み取れなかった。
何も言えなかった。
声を出しかけて、やめた。
こういうとき、うまく反応できない自分がいる。結局、何もなかったふりをして別のパンを手に取りながら、じわじわとした悔しさが胸に広がっていった。
お目当てのパンは一個しかなかったのに、それを目の前で奪われた感覚が、ずっと残り続ける。
レジへ向かおうとトレーを持って振り返ったとき、店内のスピーカーからアナウンスが流れてきた。
焼き上がりの声が気持ちを変えた
「とうもろこしパンが焼き上がりました〜!」
やわらかく弾んだ店員の声が、店内に響いた。
厨房の奥から漂ってくるバターと甘みの香りで、さっきとは別の焼きたてが棚に並べられていく。
ホカホカの湯気を立てたパンを見た瞬間、なんだかじわっと力が抜けた。
さっきまでの悔しさが、すとんと片付いたわけでもない。
でも、「ああ、もう一度買えるんだ」という安堵が先に来た。
新しいとうもろこしパンをトレーに乗せながら、ふっと顔がほころんだ。
視線を上げると、さっきの割り込み女が振り返って棚を見ていた。
レジを済ませた直後らしく、自分が奪った一個より焼きたてのパンが並んでいることに気づいたようだ。気まずそうに目を逸らして店を出ていく後ろ姿を見送りながら、さっきまでの悔しさがすっと薄れていく。
立場が一変した瞬間だった。
今日の朝ごはんは、やっぱり焼きたてにすることができた。
お気に入りのパンを口にしたとき、しみじみと思った。
こういう偶然の救いが、普通の一日をちょっと上向きにしてくれる。冷めたパンを抱えて帰る人より、湯気の立つパンを抱えて帰る人のほうが、確実に今日は気分が良いはずだ。
モヤモヤしたまま帰らなくてよかった。そう感じながら、パン屋を後にした。
たった一個のパンのことなのに、気持ちがこんなに変わるものだとは思わなかった。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、50代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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