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「私はやっていません」証拠を机に置いた瞬間に青ざめた課長→人前で頭を下げた課長の変化

機嫌で変わる上司のいた職場
以前の職場に、機嫌で態度が変わる課長がいた。
普段は穏やかで、会議では柔らかく意見をまとめる。
笑顔で声をかけてくれることもある。
ところが繁忙期に差しかかると空気が一変する。
些細なミスでも部下を人前で叱り飛ばし、声量が上がり、目つきが鋭くなる。
チーム全体がその視線を気にして動くようになっていた。
私も何度か矢面に立たされた。
「なんで確認しなかったの」「これじゃ使えない」。そのたびに周囲は顔を伏せ、誰も助け船を出さない。
職場全体に、課長の機嫌をうかがう空気が漂い続けていた。
あの日まで、それが当たり前の職場だと思っていた。
「私はやっていません」
ある月の繁忙期、取引先への提出書類にミスが見つかった。
課長はすぐに私のデスクへ来て、低い声で言った。
「これ、確認してなかったのはあなただよね」
周囲の視線が集まるのがわかった。
いつもの展開だ。誰かが矢面に立たされ、課長が断じて、場が締まる。
そのサイクルを何度も見てきた。今日はそれが自分の番になっただけだ、と頭のどこかで思っていた。
でも今回は違う。
その書類の確認フローは、課長の承認を経る手順になっていた。
私は前日、承認を求めるメールを送っていた。
返信はないまま、翌朝に書類は提出されていた。
「私はやっていません」
そう言いながら、手元のスマートフォンを静かに机に置いた。画面には、前日送ったメールとその送信時刻がそのまま残っていた。
課長の表情が変わった。目が画面に向いた。
そのまま、数秒間、何も言わなかった。
その場で頭を下げた課長
周囲の同僚が顔を上げていた。課長は画面をひと通り確認してから、少し間を置いた。
「…すまん、これは私のせいだ」
小さな声だったが、オフィスに静かに届いた。課長はそのまま取引先への対応に移り、フロアの空気が少しだけ変わった。
席に戻って深呼吸した。声が震えていなかったか、今でもわからない。
でも言えた。あのとき言えなかった自分を振り返るたびに、あの日の自分に少しだけ感謝している。
翌日からしばらく、課長の声量が落ち着いていた。気のせいではなかったと思う。溜まっていたものが、少しほどけていく感覚があった。
同じ部署の後輩が「あのあと、課長が自分からミスを確認するようになった」と教えてくれた。
たまたま証拠が手元にあっただけでも、意味はあったのだと思う。
あのとき「私はやっていません」と言えた自分を、今でも少し誇らしく思う。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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GLAM Lifestyle Editorial
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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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