Share
「電話、鳴ってますよ」目の前で別の話を始める同僚たち→3コール越えても誰も動かない職場に残った葛藤

鳴った瞬間に始まる雑談
事務職として働き始めて2年目になる頃から、ある光景に気づくようになりました。フロアの電話が鳴ると、他の社員たちが急に身近な人と話し始めるのです。
「そういえば昨日のドラマ見ました?」
受話器の真横に座る席が隣の同僚が、わざわざ反対側の人に話しかけ始めます。
一拍ずれてもう一人が書類整理を始め、別の席では資料の山を急に並べ替える音が響きます。
呼び出し音は1コール、2コール、3コール。誰も動かない空気が事務所に広がっていきました。
直前まで静まり返っていたフロアが、電話の音を合図にいきなり活気づくのです。
あまりにわざとらしくて、最初に気づいた日は思わず手元の作業を止めてしまったほどでした。
「電話、鳴ってますよ」
つい声に出してそう言ってしまったこともあります。けれど誰も顔を上げず、雑談はそのまま続いていったのでした。
取らない人ほど話が長い
結局、私が立ち上がって受話器を取ります。取り次ぎを終えて席に戻ると、さっきまで雑談していた同僚たちはもう自分の作業に戻っているのでした。
「ありがとう、助かった」
と席が隣の同僚は軽く言います。
けれど、その「ありがとう」は次の電話が鳴ったときには忘れられているのでした。雑談はぴたりと再開し、私が席を外しているあいだだけ流れる、特別な時間のようになっています。
気になって観察してみると、電話を避ける同僚ほど、優先順位の低そうな仕事をわざわざ始めるのが分かりました。
封筒の宛名を書き直したり、ファイルの背表紙を整えたり。電話さえ鳴らなければ手をつけないような小さな仕事を、呼び出し音と同時に始めるのです。
声に出して言えない違和感
新人だから取るのは仕方ない、と最初は思っていました。
でも入社3年目になっても、電話の前で椅子を引いて話し出すのは決まって同じ顔ぶれ。
役職のある先輩も、新卒の後輩も、同じように避けるのでした。
(私が取らなかったら、3コール、4コール、いつまで鳴り続けるんだろう)
そう思いながら、結局は手を伸ばしてしまう自分にも嫌気がさしてきます。
文句を言える相手もいません。「電話を取って」と先輩に言うのは角が立つし、上司にこぼせば「気が利く子だね」で済まされそうな気もします。
仕事の評価には繋がらず、でも取らなければ業務が回らない。そういう半端な役割に、いつの間にか自分が固定されていたのでした。
今日も呼び出し音が鳴り、同僚の雑談が始まる。どこにも持っていけないモヤモヤだけが、私の中で静かに積もっていきます。
誰にも届かないこの違和感を抱えながら、明日もまた、同じ机で電話を待つことになるのでした。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、20代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
ほかの小説も読む
登場人物から探す
テーマ・シチュエーションから探す
結末から探す
最も人気の短編小説
もっと見る >スカッとする短編小説
もっと見る >モヤモヤ短編小説
もっと見る >ゾッとする短編小説
もっと見る >LINEの短編小説
もっと見る >実体験をもとにした短編小説
もっと見る >恋愛トラブル
もっと見る >ハラスメント
もっと見る >金銭トラブル
もっと見る >浮気・不倫
もっと見る >迷惑
もっと見る >仕事のトラブル
もっと見る >非常識
もっと見る >LINE誤爆
もっと見る >思わず気持ちが晴れた「スカッと」
思い出しても背筋が凍る「ゾッと」
その感情を、物語にしませんか。
GLAMでは、あなたのリアルな体験エピソードを
お待ちしています。

GLAM Lifestyle Editorial
編集部
日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
Feature
特集記事

