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「今日も実家に行ってくるね」結婚直後から週一で帰省する夫。さりげない不満も届かないまま続く休日

新婚の朝に必ず鳴る電話
結婚してまだ数ヶ月。土曜日の朝、コーヒーをいれて二人でゆっくりニュースでも眺めようかという時間に、決まって夫のスマートフォンが鳴る。
発信者は、夫を育ててくれた父方の叔父夫婦だった。
夫は両親を早くに亡くしている。子のいなかった叔父夫婦が引き取り、目に入れても痛くないというほど大切に育ててくれたと聞いていた。
だから盆暮れに顔を出す程度の付き合いなら、私も気持ちよく送り出せる。
けれど現実は違った。
電話を取った夫は、画面に向かって笑顔のまま立ち上がる。
「今日も実家に行ってくるね」
こちらに振り返って告げる夫はすでに玄関にいた。
休日が丸ごと消えていく感覚
支度を整えて家を出ていく夫の背中を、私はソファに座ったまま見送ることが増えていった。
叔父夫婦の家は、車で一時間ほどの距離。昼食を一緒にとり、夕方まで世間話をしてから帰ってくるのが定番のコースで、戻る頃には外はもう薄暗い。
休日は週に二日しかない。
そのうちの一日が、毎週そうやって溶けていく。日曜にまとめて家事をこなし、平日の夜にはそれぞれの仕事の話を少しするだけ。
新婚らしい時間というものを、きちんと過ごせている自覚がだんだん薄れていった。
(次の土日も、結局ひとりで過ごすことになるのかな)
玄関のドアが閉まる音を聞きながら、台所に立つ。コーヒーは、もう一杯ぶん多く淹れすぎてしまっていた。
届かないさりげない不満
気持ちを伝えなかったわけではない。叔父夫婦への感謝は本物だし、行くこと自体を止める気はなかった。だから言い方は慎重に選んだ。
「たまには二人でゆっくり過ごしたいな」
夫はそのたびに頷いてはくれる。けれど、土曜の朝の電話には、やはり同じ笑顔と同じ即答で出かけていく。
「行ってくる、夕方には戻るから」
悪気がないのが、いちばん難しいところだった。育ててくれた人たちを大事にする夫の姿は、本来であれば誇らしい姿のはずなのに、その優しさの中に新妻である私の居場所が見当たらない。
大事にしてもらった人を、夫が今度は大事にしている。
それを否定するほど私も鬼ではない。ただ、毎週ひとり残される休日の長さだけが、新婚生活の中にすこしずつ澱のように積もっていく。新しいクッションを買ったこと、ベランダで育て始めた小さなハーブのこと、平日にあった笑い話。話したい小さな出来事が、次に夫が家にいる時間まで持ち越され、いつの間にか伝えそびれていく。今もこの感覚に、ぴったりの名前を付けられないままでいる。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、20代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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GLAM Lifestyle Editorial
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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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