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「長男の嫁なんだから当たり前でしょ」猛暑の墓掃除も葬式の準備も全部任される私→縁を切ると伝えた日の解放感

過疎の田舎に嫁いだ長男嫁の朝
夫の実家は、山あいの過疎の集落にある。代々の檀家として地元の寺と深い付き合いがあり、葬式や法事のたびに親族が一斉に集まる家だった。
夫は4人兄弟の長男。子供のころから「長男なんだから」と厳しく躾けられ、家での扱いは正直、見ていて気の毒なほどだった。
葬式の段取り、寺との打ち合わせ、香典返しの手配。誰かが亡くなれば、まず夫に連絡が来る。葬式費用も「長男だから多めに包め」と当然のように言われる。
私はその夫の妻、つまり長男の嫁として嫁いだ。
祖父の三回忌の朝、義母から電話があった。
「あなたも今日は朝から来てね。お料理出すから」
当日の朝6時に呼び出された私は、台所で煮物を仕込み、お膳の準備をし、お茶を淹れて回った。義姉も次男の妻も、誰一人として手伝いに立たない。
「すみません、お皿の場所がわからないので教えてもらえますか」
義母を呼ぶと、にこやかに振り返って言われた。
「長男の嫁なんだから当たり前でしょ、次からは覚えといてね」
その一言で、頭の奥が静かに冷えた。
猛暑の墓掃除と縁を切ると決めた日
お盆になると、強制参加の帰省がやってきた。
義姉夫婦の都合に合わせて日程が決まり、私たちの仕事や子供の予定は誰にも聞かれない。義姉が「この日に行くから」と言えば、それが決定だった。
その夏は記録的な猛暑だった。
朝から気温は30度を超え、寺の境内に並ぶ墓石は、触れると火傷しそうなほど焼けていた。
私と夫は二人だけで墓掃除をしていた。義姉夫婦も次男夫婦も、縁側で扇風機にあたりながら麦茶を飲んでいる。
水汲み、雑巾がけ、雑草抜き、線香の片付け。汗が目に染みて視界がにじむ。
「ちょっと、誰か飲み物だけでも持ってきてくれませんか」と頼みに行こうとした夫を、私は止めた。
持ってこないことが、もうわかっていたから。
その日の夜、宿に戻った私は、長男嫁としての3年間を頭の中で巻き戻した。
葬式の朝の台所、年に何度もある法事、お盆の墓掃除、義姉夫婦に合わせて毎回ねじ込まれる帰省。
誰も助けてくれない。手伝う気もない。
翌朝、私は夫に伝えた。
「私は、もうこの家とは関わらない。あなたが行くのは止めない。でも私と子供は、この家のための行事には二度と参加しない」
夫は黙って何度も頷いた。彼自身、もう限界だったのだ。
義実家に伝えた日、肩から重石が落ちる音がした。お盆も法事も、夏休みは家族水入らずで過ごせる。あの息苦しさから解放されたのだと、家を出るときに広がる夏の空を見て、ようやく実感した。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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