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通勤ラッシュの満員電車でスマホに夢中で動かない若者。声を呑み込んだ乗客たちの胸に残るモヤモヤ

扉付近で動かない若者の背中
朝の通勤ラッシュ。
すし詰めの車内に、なんとか乗り込んだのは、いつもの七時三十二分の電車でした。
身体をねじ込んだ私の目の前には、扉のすぐ近くに立つ若い男性の背中があります。
両手にしっかり握られていたのは、画面の光がまぶしいスマートフォン。
動画を観ているのか、ゲームをしているのか。
とにかく、彼の意識は完全に画面の中にあって、こちらの世界には戻ってこない様子でした。
次の駅に到着しても、若者の身体はぴくりとも動きません。
まだ車内には、入口付近に立つ余裕がありました。
少し詰めてくれれば、ホームで待っている数人の乗客が問題なく乗れる、それくらいの隙間です。
(少しだけ、奥に行ってもらえないかな…)
誰もが胸の中でそう呟いたはずです。
けれども声に出した人は、誰一人としていませんでした。
声を出さなかった、あの朝のモヤモヤ
「すみません、もう少し詰めていただけますか」
そう一言伝えれば、たぶん解決していた話です。
でも、誰もその一言を口にしませんでした。
私自身、そろそろ六十を超えていますが、若い人とトラブルになるリスクを思うと、声を出すのがためらわれました。
逆ギレされたら。
その場でにらまれたら。
頭の中で過る最悪のシナリオが、口を閉ざさせるのです。
結局、ホームに残された数人の乗客は、次の電車を待つしかありませんでした。
扉が閉まる直前、その方たちの諦めたような表情が、私の網膜にやけに焼きつきました。
若者は最後まで、スマホから目を離しません。
悪気は、たぶんないのです。
ただ、ほんの少し顔を上げて周りを見るだけで気づける、その小さな配慮が抜け落ちている。
誰も声を上げず、誰も怒らず、ただ静かにモヤモヤだけが車内に積もっていく朝。
降りる駅に着いて、私は若者の脇をすり抜けてホームに出ました。
振り返って車内をもう一度見ると、彼は相変わらず同じ姿勢のまま、画面に視線を落としています。
明日の朝、また同じ場面に出くわしたら、私は声をかけられるだろうか。
階段を上りながら、まだ温まらない通勤の足取りで、ぼんやりとそんなことを考えていました。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、60代以上・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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GLAM Lifestyle Editorial
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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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