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「俺がやるからいいよ」と途中で仕事を取り上げた上司→成果が出た翌朝に笑顔で語った手柄に飲み込んだ言葉

「俺がやるからいいよ」の一言
仕事は好きだ。
40代になった今もそう言い切れる自分がいる。
以前の職場で、私は取引先向けのプランの見直しを任されていた。
数字を整理し、担当部署との調整を重ね、ようやく全体の骨格が見えてきた頃だった。
自分なりに手応えを感じていた。
その週の水曜日、直属の上司が私のデスクに近づいてきた。
特別な用件らしく、いつもより声が低かった。
「そのプラン、やっぱり俺がやるからいいよ」
理由は説明されなかった。
「今の段階でね」とだけ付け加えられ、私が手元でまとめていたファイルはフォルダごと引き取られた。反論しようとしたが、上司はすでに自席に戻っていた。
納得はできなかった。
ここまで積み上げてきたものを途中で渡すことへの抵抗感は、じんわりと広がった。
でも口には出せなかった。それが当時の自分の限界だった。
翌朝、上司が語り始めた
数週間後、取り組みは形になった。
上司が引き取って仕上げたプランが、想定通りの効果を上げたのだ。
翌朝の朝礼で、上司は清々しい顔で立っていた。
「今回は俺が主導したこともあって、いい結果につながったよ。ああいう判断は経験がいるからね」
私が積み上げた下地への言及はなかった。
隣の席の先輩が、わずかに私のほうを見た。
気づいている人はいた。
でも、その場で声を上げる人は誰もいなかった。
私も黙っていた。
言えなかった、というより、言ったところで何も変わらないとわかっていたのだと思う。
「成果が出たなら、まあいいじゃないか」と自分に言い聞かせながら、やはり胸のどこかがざらついていた。
答えのないまま残ったもの
もやもやは、その後しばらく消えなかった。
自分のやり方は正しかったのか。取り上げられた時点で、もっとはっきり主張すべきだったのか。
繰り返し考えても、答えは出てこない。
同じような立場に置かれた同僚が何人かいるのも、薄々気づいていた。
でも、みんな同じように飲み込んでいるのだとわかっていた。
一つだけ確かなことがある。あの仕事を好きでやっていた、という事実は誰にも奪えない。
上司が手柄を語ろうと、積み上げた時間と思考は私の中に残っている。
それでも、笑顔で語る上司の顔は、今もはっきり思い出せる。
あの「俺がやるからいいよ」の一言と一緒に。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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GLAM Lifestyle Editorial
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日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。
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